日常的に行える簡単なメンテナンス方法。
お手入れとか必要なの?
サビや汚れが酷くなってから頑張って落とすより、
普段から簡単なお手入れをしておくほうが楽ですよ。
工具の基礎 3【コンビネーションレンチ・ギアレンチ(ラチェットレンチ)】
工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】
工具の基礎 12【スピンナーハンドル・T型スライドハンドル】
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錆について。
水分や汚れが工具の金属部分に残ったままだとサビが発生することがあります。
水分を呼びこみやすいホコリも錆の原因となります。
排気ガス・塩分(潮風、手汗)などは、水分を呼ぶだけでなく、サビを促進する効果もあります。
主な対策。
・水分、汚れを放置しない。
・防錆油を塗る。
・なるべく湿気、ホコリを避けて保管。
・錆のメカニズム、ざっくり説明。
- 鉄の表面に付いた水分が酸素を吸収。
- 水と酸素の化学反応が鉄イオンを吸収。
- 酸素と鉄が結びついて酸化鉄(サビ)となる。
乾拭き。
工具を使った後は、ウエス(メンテナンス用のタオル)で汚れを拭き取ります。
出来れば毎回。
特に素手で金属部分を触った後は、なるべく拭くようにして下さい。
※手汗には塩分が含まれており、放置しておくと錆びやすくなります。
毎回?
バイクの金属パーツを素手でベタベタ触りたくないし、触って汚れたら拭き取りたいでしょ。
工具も拭いてあげて下さい。
「片付ける前に拭く」というのを習慣にしてしまえば、それほど面倒くさくはないですよ。
ペーパーウエス。(紙ウエス)
油汚れ用にあると便利。
ウエスに付いた油汚れは、簡単には落ちません。
再利用はかなり難しいです。
油汚れが付いたウエスを保管しておくのも、匂いや安全面からあまり好ましくはありません。
油汚れには、使い捨てのペーパーウエスが向いています。
厚手で丈夫なペーパーウエスは、バイクのチェーン清掃にも使えます。
ブラシ。筆。
プライヤーのギザギザ部分、軸の周りなど、ウエスでは拭き取りにくい場所はブラシを使って汚れをかき出します。
凄く小さい隙間には、「歯ブラシ」や「硬めの筆」が使いやすくておすすめです。
「汚れを放置していた」等で、ひどく汚れてしまった場合は、洗剤で洗います。
洗浄。
- 左:弱アルカリ性の食器用洗剤。
- 中:弱酸性の食器用洗剤。
- 右:中性の洗濯用洗剤。
なるべく中性の洗剤を使って洗います。
いちばん素材にダメージを与えにくいのが中性です。
汚れが ひどいときは、中性洗剤をほんの少し入れた水を使い、ウエスやブラシで擦って汚れを取ります。
洗剤の濃度が高いほど素材にダメージを与えやすくなるので、水 1リットルに対して洗剤 数滴ぐらいから始めて下さい。
汚れ落ちが悪いときは、少しだけ洗剤を足します。
一定の濃度を越えると、洗浄力は変わらなくなります。洗剤を入れすぎないようにして下さい。
洗剤で洗った後は水洗いをして洗剤成分を洗い流します。
その後、ウエスで拭いて風通しの良い場所に置き、完全に水気がなくなるまで乾かします。
・弱アルカリ性と弱酸性。
「弱」と付いているように、影響は少なめです。
使ってもそうそう問題が起こることはありません。
中性よりも洗浄力が高いというメリットもあります。
ただし、洗剤成分が残ってしまうと、変形・変色・サビなどの原因となるので、しっかりと洗い流すようにして下さい。
一般的に、強いアルカリ性の洗剤は、樹脂やゴムにダメージを与えます。
強い酸性の洗剤は、樹脂・ゴム・メッキなどに少しダメージを与え、更に金属を錆びやすくしてしまいます。
パーツクリーナー。
金属部分には、パーツクリーナーが使えます。
※ゴム、樹脂に影響が少ないパーツクリーナーもあります。
パーツクリーナーをかけて、ブラシやウエスで擦って汚れを取ります。
パーツクリーナーは洗浄力が高くて素早く乾くものが多いので、手早く済ませたいときに向いています。
洗浄後は、出来るだけ「防錆(ぼうせい)油」を塗るようにして下さい。
防錆油については次で説明します。
防錆(ぼうせい)油。防錆剤。
「防錆(ぼうせい)」とは文字通り、錆を防ぐこと。
金属部分に防錆油を塗ることで、錆びにくくすることが出来ます。
スプレータイプ。
直接スプレーし、ウエスでベタつかなくなるまで拭き取る。もしくは、ウエスにスプレーして、塗り込むように拭いていきます。
ベタつくとホコリが付きやすくなります。手で触れない部分もしっかりと拭き取っておきます。
液体タイプ。
小皿などに少し出して、刷毛・筆で塗っていきます。
その後、ベタつかなくなるまでウエスで拭き取ります。
手早く済ませたいなら、工具かウエスに直接たらして塗り込んでいきます。
ただし、細かい部分はウエスだと塗りきれない可能性があります。
狭い場所は、細い筆が便利。
ベタつくとホコリが付きやすくなるので、薄く塗って、可能な限り拭き取って下さい。
・作業時の注意点。
閉めきった室内などで作業せず、換気を行って下さい。
防錆油を塗る頻度。
私の経験上、工具箱に入れて室内保管であれば、1年に1回ぐらいで十分です。
ただし、格安工具や錆びやすい環境(海の近くなど)、使用頻度が多い場合は、回数を増やしたほうがいいでしょう。
※100円ショップやホームセンターの格安工具は錆びやすいものが多いです。「錆びたら買い換え」でもいいと思いますが。
錆びやすい場所。(防錆油を塗っておきたい場所)
ペンチ・プライヤー・ニッパーの金属部分、ドライバーの先端などメッキされていない場所は錆びやすくなります。
その他にも、
スパナ・めがねレンチのボルトと接する場所。ソケットの内側なども錆びやすい場所です。
メッキ部分は かなり錆びにくいですが、たまには防錆油を塗ってあげましょう。
ゴム、樹脂グリップ。
グリップに使われることが多い「樹脂」「ゴム」に防錆油が かからないようにして下さい。
変色、変形したり、隙間に入ってグリップが外れてしまったりするおそれがあります。
防錆油が かかってもすぐに問題が起こることはありません。
慌てずにウエスで拭き取って下さい。ベタベタになってしまったときは、中性洗剤(食器用洗剤など)で洗い落とします。
樹脂、ゴムに影響が少ないと書かれているパーツクリーナーでも構いません。
ラチェットハンドルの防錆。
ラチェットハンドルの裏側は「黒染め加工」されていることが多いです。
黒染め加工している場所は錆びにくくなりますが、メッキほどではありません。
ソケットが当たって傷も付きやすいので、ついでに防錆油を塗っておくことをおすすめします。
・注意点。
ラチェットハンドルの内部には潤滑油(グリース)が使われています。
防錆油を直接スプレーしたり、かけたりすると、隙間から浸透して中のグリースを溶かしてしまうおそれがあります。
なるべく防錆油はウエスに付けて拭くようにして下さい。
被膜が残る防錆油。
厚めの被膜が残り続けることで錆びを防ぐタイプの製品があります。
錆びの原因の水分、酸素を触れさせないことで強力に錆びを防ぎます。
油なので、被膜はベタつきます。
ベタつくとホコリが付きやすくなりますが、被膜で金属とホコリが接触しない為、錆びの原因になりません。
ただし、手やボルトなどが触れる部分は拭き取ってしまわなければならず、性能は低下します。
硬めのコーティングのような被膜をつくる製品もあります。
工具にはちょっとオーバースペックですが、高価な工具を長期間保管したい場合は検討してみてもいいかもしれません。
定番商品。
入手しやすく、評判の良い防錆油。
性能別で紹介。
(メーカー名の)五十音順。
高性能。
海の近く、高温多湿となるガレージ内で壁掛けなど、厳しい保管状況に向いている防錆油。
・AZ:長期防錆オイル。
ベタつく被膜で強力に防錆。値段は高め。
・エバーズ:長期防錆剤。
高性能。ただし値段は高め。
・呉工業:スーパーラストガード。
茶色のベタつく被膜で強力に防錆。
値段は高くないが茶色っぽくなる。
ほぼ同じような「呉工業:長期防錆スプレー」という製品よりレビューが多く、情報が仕入れやすい。
なかなかの性能。
バイクにも使いやすい製品が多いので、余っても無駄になりにくいです。
・呉工業:スーパー 5-56。
有名な556ではなく、「スーパー」が付くほう。
556シリーズでいちばん防錆効果が高い。
・呉工業:3-36。
工業用の定番潤滑剤。
・呉工業:6-66。
マリーン用の定番潤滑剤。
・ホーザン:防錆油。
工具メーカーの防錆油。
同じような容器で潤滑油もあります。間違えないように。
・ワコーズ:ラスペネC 業務用 (小容量 ラスペネ ミニ)。
通常のラスペネではなく、フッ素入りの業務用。
バイク用潤滑剤としても高評価だが、値段は高め。
・ワコーズ:メンテループ。
車、バイク、自転車の定番潤滑剤。
高評価だが、値段は高め。
低価格。
錆びやすい環境じゃなければ、これで十分です。
・呉工業:556。
防錆のイメージは薄いですが、数々の実証実験でそこそこの効果を出しています。
・呉工業:556 無香性。
油の匂いが気になる人におすすめ。
・ミシンオイル(スピンドルオイル)。メーカーは色々。
通販では業務用で大容量の製品が多く、少量の製品は種類が少なめ。
近所にホームセンターがある人は、電動工具コーナーの近くを探してみて下さい。たいてい置いてあります。
ミシン以外に、バリカン、釣具、ゴルフ用品、自転車のチェーンなどにもよく使われます。
防錆油のランキング、レビューや商品詳細はこちらからご覧ください。
用途にあった商品が出やすいワードで検索しています。
リンクは全て別タブで開きます。
調べたい商品が決まっている方は、検索ボックスにメーカー名などを足して検索して下さい。
サビ取り。
錆が少しだけなら、潤滑スプレーをかけてブラシで擦ります。
錆を取った後は、ベタつかなくなるまで乾拭き。
あまり無いとは思いますが、乾拭きで汚れが取りきれない場合は、中性洗剤かパーツクリーナーで洗って、改めて防錆油を塗って下さい。
真鍮ブラシ、スチールウール。
なかなか取れないときは、真鍮ブラシで軽く擦ります。
金属たわし(スチールウール)を使うのも定番です。
ただし、スチールウールは鉄粉が出やすく、作業後に洗い流す必要があります。
どちらも金属部分にはダメージを与えにくくなっていますが、ゴムや樹脂のグリップに当たると傷が付くので注意して下さい。
生活の豆知識でよく目にする「重曹」「クエン酸」「お酢」でもサビは落とせます。
しかし、水やお湯に溶かすなど手間がかかる為、潤滑スプレーのほうがお手軽です。
錆が多めの場合は市販のサビ取り剤を使います。
サビ取り剤。
サビ取り剤は、バイク用のものを既に持っていれば流用できます。
アルミ専用や、サビ取りというより「磨き用」という製品もあるので注意して下さい。
サビ取り剤は、製品によって使用方法が違います。
使用方法は主に3パターン。
- 擦り取る。
- 直接 塗る。
- 薄めて 塗る。もしくは漬け置き。
・商品例。
- 消しゴム タイプ。
サンドペーパーのようなもので、かなり目が細かくないと傷が付きます。
画像の製品は粗い目と細かい目の 2層。 - 研磨剤を布に染みこませたタイプ。
定番商品のネバダル。
研磨剤はかなり細かく傷は付きにくいですが、軽いサビしか落とせません。 - 直接塗るタイプ。
クリーム状で垂れにくい製品はバイクにも使いやすいです。 - 薄めて塗るタイプ。
液体なので漬け置きも可能。
使用後の措置は、説明書に従ってください。
乾拭きだけでOKのものや、洗って乾かしてから防錆油を塗るように推奨しているものなど製品によって対処は違います。
・作業時の注意点。
閉めきった室内などで作業せず、換気を行って下さい。
こすり取るタイプは、表面を傷付けてしまうおそれがあります。
メッキ、黒染めを出来るだけ痛めたくない人は、こすり取るタイプ以外のものにして下さい。
バイク用のクロームメッキ保護剤を持っていれば、サビ取り後メッキ部分に流用できます。
サビ取り剤は、ゴム手袋を付けるように指示している製品が多いです。
ゴム手袋の選び方は、こちらをご覧ください。
サンポールを使ったサビ取り。
サンポールにしばらく漬け込んで、錆が取れたら水洗い。
サンポールの酸で酸化しやすく(サビやすく)なっているので、アルカリ性のマジックリンなどで洗って中和する。
という方法です。
※樹脂、ゴムのグリップは外すか、かからないようにしないと変色します。
※中和後は洗剤成分を洗い流し、乾かして防錆油を塗る必要があります。
有名な方法なのですが、あまりおすすめはしません。
デメリット。
・手間がかかる。
・少しだけですが酸化被膜(メッキや黒染め)を溶かす。
・洗っているうちに錆びてくるなど失敗することもある。
・失敗しても自己責任。
・販売メーカーの金鳥は絶対にやらないようにと警告している。
錆取り剤のランキング、レビューや商品詳細はこちらからご覧ください。
用途にあった商品が出やすいワードで検索しています。
リンクは全て別タブで開きます。
調べたい商品が決まっている方は、検索ボックスにメーカー名や「バイク」などのワードを足して検索して下さい。
潤滑剤。
可動部分の動きが悪くなってきたときに使います。
可動部の隙間を狙って浸透させます。
その後、何度か動かして馴染ませます。
スムーズな動きに戻らない場合は、何回か同じ作業を繰り返して下さい。
動きが戻ったら、余分な油を拭き取ります。
潤滑剤は、バイク用に持っているものを使えばOK。
ワコーズなど高価な潤滑剤でもったいない場合は、クレ556の少量タイプなどがおすすめ。
保管。
工具箱に入れて、高温・多湿とならない場所に保管する。
というのが基本です。
海の近くなど厳しい環境で保管する場合は、
・防錆油を塗る回数を増やす。
・新聞紙や布で包む。
・乾燥剤を入れる。
といった対策を行って下さい。
※ビニールなど通気性が悪いもので包むと、結露で中が濡れる可能性があります。
仕切りの無い工具箱。
色々な工具を乱雑に入れると、出し入れのときに工具同士がぶつかって傷が付くおそれがあります。
錆びにくいメッキや黒染め加工も、傷が付くと錆びやすくなってしまいます。
・目当ての工具を見つけにくい。
・「もらい錆」が発生するかもしれない。
といったデメリットもあります。
・もらい錆。
「もらい錆」は、錆びた金属が接触していると、錆びていない金属にもサビが移ってしまう現象です。
錆びにくいメッキやステンレスも簡単に錆びてしまいます。
最初は表面にサビが付くだけですが、放置していると内部まで侵食していきます。
錆びやすい工具と、錆びにくい工具は分けて収納したいですね。
対策。
- 仕切りを自作。
- 汎用の仕切りを使う。
- 小さい袋で小分けにする。
- タオルで包む。
- 深さがあるなら、ちょうど入るぐらいのトレーを入れる。
- 縦置きできるペン立てなどを入れる。
100円ショップのソフトケース。
色々なサイズが有り、柔らかくて通気性もあって使いやすい。
有名メーカーの工具箱なら、引き出し・トレイ・仕切り等で小分けに出来る作りとなっている場合が多いです。
詳しくはこちらをご覧ください。
所長から一言。(まとめ)
使った後は乾拭き。
たまに防錆油を塗る。
高温・多湿を避けて保管。
なるべく分かりやすく分けて保管。
工具の基礎 3【コンビネーションレンチ・ギアレンチ(ラチェットレンチ)】
工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】