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工具の基礎 8【ロッキングプライヤー(バイスプライヤー)】

アイキャッチ、ロッキングプライヤー。

バイクメンテナンスでよく使われる工具の基本と使い方を解説。
第8回は、「ロッキングプライヤー(バイスプライヤー)」

いちばんの特徴は、手を放しても、固定した状態を保てること。

グリップを握って対象物を挟み、更に強く握る。
山田
山田

はい!使い方が分からないです!

神崎
神崎

基本的な使い方を分かりやすく解説します。

慣れてる人は省略しがちなポイントもちゃんと説明しますよ。

工具の基礎 一覧。別タブで開きます。

工具の基礎 1【プラスドライバー・マイナスドライバー】

工具の基礎 2【スパナ・めがねレンチ】

工具の基礎 3【コンビネーションレンチ・ギアレンチ(ラチェットレンチ)】

工具の基礎 4【ソケットレンチ(ラチェットハンドル)】

工具の基礎 5【六角レンチ・トルクスレンチ】

工具の基礎 6【モンキーレンチ】

工具の基礎 7【プライヤー・ラジオペンチ・ニッパー】

工具の基礎 8【ロッキングプライヤー(バイスプライヤー)】

工具の基礎 9【電工ペンチ 前編・ギボシ端子の付け方】

工具の基礎 10【電工ペンチ 中編・圧着端子の付け方】

工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】

工具の基礎 12【スピンナーハンドル・T型スライドハンドル】

工具の基礎 13【トルクレンチ】

工具の基礎 14【工具のお手入れ】

鈴川
鈴川

基本情報、使い方、折れたレバー代わりに使うときの注意点などを解説します。

知ってる情報は飛ばして下さい。

目次をクリック・タップで移動することもできます。

基本情報。

ロッキングプライヤー各部名称。
各部の名称。
  1. 上あご
  2. 。(挟む部分内側)
  3. 下あご
  4. ワイヤーカッター。(付いていない製品もあります)
  5. グリップ。(又は、ハンドル)
  6. 調整ネジ。(又は、調節ネジ・スクリュー)
  7. 解除レバー

画像はオーソドックスなタイプです。あごが曲がっておらず真っ直ぐなものや、特定の作業専用など様々な形状の製品があります。

いちばんの特徴は、挟んだ状態のまま固定できること。
固定台のようにして他の工具を使ったり、取っ手の代わりとしても使用できます。

一般用途では、固着したネジを掴んで回すのによく使われます。
ネジをつかんだ状態で強く固定できるので、手の力を回すほうだけに集中させることが出来ます。

バイスプライヤーでネジを回すときの注意点。
  1. あご内側のギザギザと同じ方向に回すと滑って回しにくい。
  2. ギザギザが回す方向に対して90度にすると滑りにくい。
  3. トラスねじ。
    ネジの頭が緩やかな山形。滑ってつかみにくい。

固着したネジを回すには、ネジの頭が少し出っぱっていて、ロッキングプライヤーを装着・動かすためのスペースが必要です。
トラスねじは、通常のロッキングプライヤーだと、滑ってつかめないことがあります。

有名メーカー(エンジニア・ロブテックス・スリーピークスなど)は、先端部分だけギザギザの角度を90度変えていたり、ネジをつかみやすいように湾曲させたりしている製品をラインナップに加えています。

ギザギザの角度が90度違うと、ロッキングプライヤーを立てて回せるので、広いスペースがなくてもネジを回せます。

神崎
神崎

ネジをつかみやすい形状のことは、ほぼ確実に商品説明に書かれています。

調整ネジ。(調節ネジ・スクリュー)

調整ネジを回すと下あごが可動。
  1. 調整ネジを締めると、下あごが閉じていきます
  2. 調整ネジをゆるめると、下あごが開いていきます

普通のネジと同じように、右回り(時計回り)で締まり、左回り(反時計回り)でゆるみます。

口の開きを変える以外にも、ロックする強さを調節することが出来ます。
※詳しい使い方は、少し下の「ロッキングプライヤーの使い方」で説明。

解除レバー。

解除レバーで下アゴとグリップが開く
  1. 解除レバーを下に(外側に)向かって動かすと、
  2. 口とグリップが開きます。
  3. 解除レバーは、上に(内側に)動かすタイプもあります。

ロック状態を解除するレバーです。
解除するときは、そこそこ強めの反動が出て揺れます。しっかりと持ってから解除するようにして下さい。

鈴川
鈴川

固定力を高くすればするほど、強い反動が出ます。

解除レバーを上に(内側に)動かすタイプ。

上に動かす解除レバー
  1. 上に(内側に)動かすタイプはグリップを握る動きで解除レバーを動かせます。
    持ち変えたり、もう一方の手を使わなくても解除できます。
     
  2. しかし、グリップを握ったときに解除レバーも動かしてしまい、「解除したくないタイミングで」解除してしまうことがあります。
    特に全長の短い製品は解除レバーに指がかかってしまいやすいので注意が必要です。

解除レバーを下に(外側に)動かすタイプ。

下に(外側に)動かすタイプは、片手での解除はちょっとやりにくいです。
※指が届いても力を入れにくい為。

片手で解除したいときは、グリップ下側だけを握り直すとやりやすくなります。
外す瞬間に反動で揺れるので、しっかりと握ってから解除して下さい。

押し下げる解除レバーは片手で解除しにくい。
グリップ下側だけを持って解除。

左:親指で解除レバーを押す。
右:親指以外の指で解除レバーを握る。

サイズ。

JIS規格などの規定が無い為、メーカーによってサイズはバラバラです。

主流は、

全長:140mmから230mmぐらい。
口の開く最大幅:25mmから40mmぐらい。

たいてい商品説明に書かれているので確認して下さい。

・サイズ感。

225mmと140mm長さ比較。

上:225mm。
下:140mm。

車載工具として持っておきたいなら、事前に収納できるサイズがどれくらいなのかを計っておきましょう。


色々な呼び名。
※興味ない人は飛ばして下さい。

バイク関連では「ロッキングプライヤー」という呼び方がよく使われます。
工具としては「バイスプライヤー」が一番メジャーな呼び方です。

他には、「バイスグリッププライヤー」「グリッププライヤー
発明した会社(現Irwin)の商品名である「バイスグリップ」など。

英語では、
locking pliers「ロッキングプライヤー」と呼ぶのが一般的です。

他には、 vice grip pliers「バイスグリッププライヤー」、grip pliers「グリッププライヤー」、Mole wrench「モルレンチ」、mole grips「モルグリップ」、元祖のvice grip「バイスグリップ」などと呼ばれます。

日本で多い「バイスプライヤー」とはあまり呼ばれないようです。

ロッキングプライヤーの使い方。

  1. 解除レバーを動かしてグリップを開く。
    ※ロックされている場合。
     
  2. 調整ネジをゆるむ方向に少し回す。
    ※ロックされていた場合。
     
  3. グリップを握って閉じる。
    ※ロックされていないときは、ここからスタート。
     
  4. 調整ネジを回して、つかむ物より少し口を広げる。
     
  5. 上あごをつかむ物にあてがい、調整ネジを回して締め付ける。
     
  6. 解除レバーを動かして、一旦外す。
     
  7. 調整ネジを1/4から1/2回転ほど締める。
     
  8. グリップを握って対象物をつかみ、更に強く握りこむ。(固定完了)
     
  9. 外すときは、しっかり押さえてから解除レバーを動かす。

順番に説明していきます。

1、解除レバーを動かしてグリップを開く。

解除レバーでロックを解除。

初めて使うときは、口をキツく閉じた状態でロックが かかっている場合があります。
まずは、解除レバーでロックを解除します。

※使用後でロックされていない場合は、この行程は必要ありません。

グリップを閉じるときに抵抗があるとロックをかけることが出来ます。
何かをつかんでいる時はもちろん、口をキツめに閉じている場合も (閉じきる前に上あごと下あごが当たって抵抗が起こるので) ロックがかかります。

2、調整ネジをゆるむ方向に少し回す。

調整ネジをゆるめる。

ロックされていた場合、ゆるめておかないと次の行程がやりにくくなります。
2~3回転ほどゆるめておきます。

※1、と同じく、使用後でロックされていない場合は、この行程は必要ありません。

3、グリップを握って閉じる。

握ってグリップを閉じる。

大型の製品を解除して開いていると、指が届かないことがあります。
両手で閉じて下さい。

使用後でロックされていない場合は、ここからのスタート
既にグリップが閉じていれば、そのまま持つだけです。

4、調整ネジを回して、つかむ物より少し口を広げる。

調整ネジで口の開きを調整。

だいたいでOK。
この段階では、そこまで細かく調節しなくて大丈夫です。

5、上あごをつかむ物にあてがい、調整ネジを回して締め付ける。

調整ネジを締めて対象物を挟み込む。

締め付けは、軽めでもキツめでも どちらでも構いません。

ただし、締め付け量は毎回同じぐらにして下さい。
調整ネジを回す量で固定力が変わるので、毎回同じにしておくほうが どれくらいの力で掴んでいるか分かりやすくなります。

6、解除レバーを動かして、一旦外す。

解除レバーで一旦外す。

一旦、解除します。
調整ネジに触れて動かしてしまわないように注意して下さい。

山田
山田

強く固定しているほど解除したときの反動は大きくなりますが、

指で締め付けたぐらいでは、大きな反動は出ません。

7、調整ネジを1/4から1/2回転ほど締める。

1/4から1/2回転ほど締める。

ここで、締める量が少なめだと軽くロックされ、締める量が多いと強くロックされます。

・締め付け過ぎるとロック出来なくなります。
・締め付けが弱いとロック出来てもユルユルです。
調整ネジを回す量を変えて何度か試してみて下さい。

グリップを握って対象物をつかみ、更に強く握りこむ。(固定完了)

グリップを握って対象物を挟み、更に強く握る。

強く握ると「カチン!」「パチン!」といった音と共にロックされます。

固定力が強いほど握りこむときに力が必要です。
・軽く握ってロック出来たら、固定力は弱め。
・強く握ってロックしたら、固定力も強め。

外すときは、しっかり押さえてから解除レバーを動かす。

解除レバーで一旦外す。

解除レバーを動かした瞬間、そこそこ強い反動が出て揺れます。
ロッキングプライヤーをしっかりと持ってから、解除レバーを操作して下さい。

つかんでいる物が小さい、又は軽い場合、つかんでいる物も揺れで動くので注意が必要です。

ロック後に調整ネジを回す。

調整ネジに六角レンチ用の溝付き。

ロックした後に調整ネジを締めると、より強く固定されます。
ロックした後に調整ネジをゆるめると、固定力が弱まります。

しかし、指で回そうとしても固くてなかなか回りません。

調整ネジに六角形の溝が付いていたり、ネジの頭が六角形の製品があります。
六角レンチやメガネレンチなどを使って回すことが出来ます。

固定力は かなり強い。

つかむ部材が変形しそうなときは、強くロックし過ぎないようにして下さい。

基本的にあごの内側にギザギザが付いています。
傷が付きそうな場合は、ウエス(タオル)などを間に挟んでロックします。

オート。

調整ネジを回さずに、どんなサイズでも握りこむだけでロック出来るタイプ。

メーカーによって名前が違い、「オートマチック」「オートアジャスト」「オートグリップ」「オートクランプ」などと呼ばれます。

固定する力は、事前に調節しておきます。
作業時に固定力をほとんど変えないのであれば、かなり楽になります。

ただし、値段は少し高めです。

折れたレバー代わりに使う。

転倒してブレーキレバー・クラッチレバーが折れてしまったとき、
「ロッキングプライヤーを固定してレバー代わりにする」
「車種によっては、ペダルやステップ代わりにも出来る」

昔から伝わるバイクの豆知識のひとつです。

山田
山田

聞いたことあるよ。

神崎
神崎

レバー代わりに使えるという知識よりも、
注意しておくべきポイントを抑えておくことが大事だと思います。

折れたレバー代わりに使うときの注意点。

  1. 簡単に外れないように補強する。
  2. 出来るだけゆっくり、大人しく走行する。
  3. 外れたときのことを想定しておく。
鈴川
鈴川

レバー代わりに使うなら、サイズも注意が必要です。

全長100mmから140mmぐらいの小型の製品じゃないと操作しにくくなります。

簡単に外れないように補強する。

レバーに固定後、更に補強する。
  1. 解除レバーが動かないように固定。
  2. グリップが開かないように固定。

タイラップ(結束バンド)・ビニールテープ・針金などで補強します。

解除レバーはとうぜんとして、グリップも開かないようにします。
※グリップは、力任せに広げて解除することが出来ます。

もし落としてしまったら、後続車の迷惑になります。
後続車が避けようとして事故を起こすかもしれません。
曲がり角で落としたら、バイク・自転車が踏んで転倒するかもしれません。

簡単に脱落しないように補強しましょう。

出来るだけゆっくり、大人しく走行する。

信号停止の直前でズレたり外れたりすれば、大事故に繋がりかねません。
そもそも通常のレバーよりも操作がしにくくなっています。

急発進・急加速・強引なすり抜けなど無茶な運転は控えましょう。

交通の流れの邪魔になりそうなときは、ハザードもしくは左ウインカーを出して、左端を徐行します。

外れたときのことを想定しておく。

どのような行動をとるか、あらかじめシミュレーションしておくと、焦ってパニックになる可能性を減らせます。

一般的には、
「ハザード又は左ウインカーを出して、左端に寄って停止」でしょう。

・ブレーキレバー代わりが外れたとき。
リアブレーキをじんわり丁寧にかけながら停止します。
リアブレーキはロック(タイヤがピタっと止まる)しやすいので慎重な操作が必要です。

ABS付きなら少し安心ですが、ABSはロックを防ぐもので、急ブレーキ状態は防げません。
やはり慎重に減速して下さい。

・クラッチレバー代わりが外れたとき
ギアがニュートラル以外に入っている場合、停止する少し手前でエンストすることを想定しておきます。

エンストのショックで右に転倒すると、後続車に ひかれる危険性があります。
特別な状況でない限り、左足を着いて停止して下さい。

アクセル操作とチェンジペダル操作のタイミングを上手く合わせると、クラッチレバーを引かなくてもギアチェンジ出来ます。

ただ、出来る人でも、焦っている状況で出来るかどうかは分かりません。
事前に「外れたらノークラッチでのギアチェンジに切り替える」とシミュレーションしておくことをおすすめします。

2速からニュートラルは入りやすいので、ロッキングプライヤーがズレてきたり、外れそうな兆候が見られたときは、2速で走行すると少し安心できるかもしれません。

有名メーカー。

ロッキングプライヤー(バイスプライヤー)を販売していて、日本で入手しやすいメーカー。

国別、五十音順、アルファベット順。

日本
・アストロプロダクツ。
・スリーピークス技研。(3.peaks)
・高儀。
・フジ矢。
・藤原産業。(SK11) (低価格帯 E-Value)
・ロブテックス。(LOBSTER、エビ)
・DEEN。(ファクトリーギア)
・ENGINEER。(エンジニア)
 有名商品のネジザウルスは、使い方が独特なので注意。
・KTC。(京都機械工具)
・TONE。
・TOP。(トップ工業)

アメリカ
・IRWIN TOOLS。(アーウィン)
 ロッキングプライヤーの元祖。商品名バイスグリップ。

カナダ
・SIGNET。(シグネット)

スウェーデン
・BAHCO。(バーコ)

ドイツ
・KNIPEX。(クニペックス)
 プライヤー専門メーカー。
・STAHLWILLE。(スタビレー)
・Wiha。(ヴィーハ)

フランス
・FACOM。(ファコム)


ロッキングプライヤー(バイスプライヤー)のレビューや商品詳細は、こちらからご覧ください。

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所長の次回予告。

所長
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次回は「電工ペンチ」前編!

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工具の基礎 7【プライヤー・ラジオペンチ・ニッパー】

工具の基礎 8【ロッキングプライヤー(バイスプライヤー)】

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工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】

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工具の基礎 13【トルクレンチ】

工具の基礎 14【工具のお手入れ】