バイクでよく使われる工具の基本と使い方を解説。
第6回は、「モンキーレンチ」
あんまり使わないイメージ。
強いこだわりがなければ、
必要になってから購入する。という感じでもOK。
モンキーレンチは補助的な工具ですが、色々なサイズのボルトに対応できます。
車載工具を入れるスペースがほとんどなくても、モンキーレンチ1本ぐらいなら入るかもしれませんね。
工具の基礎 3【コンビネーションレンチ・ギアレンチ(ラチェットレンチ)】
工具の基礎 6【モンキーレンチ】
工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】
工具の基礎 12【スピンナーハンドル・T型スライドハンドル】
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モンキーレンチ、各部の名称。
- 上あご。
- 口。(ボルトが挟まる部分)
- 下あご (ジョー)。
- ウォーム (又はウォームギア)。
- ラック。(ギザギザ部分)
- グリップ (又はハンドル)。
- ハンドル穴。
- ネジ状の「ウォーム」を回すと、
- 「下あご」がスライドして動きます。
ウォームの回す向きを変えることで、閉じていくことも開けていくことも可能。
無段階で動くので、挟める大きさであれば、どんなサイズのボルトにも対応できます。
ただし、下あごが固定されておらずガタつきが発生しやすい為、強い力をかける作業には適していません。
モンキーレンチは「補助用」「緊急用」という位置づけの工具です。
「ラック」はウォームと噛み合うギザギザ部分で、下あごの一部です。
下あごを開いていくと、だんだん外に飛び出してきます。
あまり気にならないとは思いますが、邪魔に感じる人は、商品説明に「下アゴの飛び出し量が少ない」などと書かれている製品を選んで下さい。
「ハンドル穴」は、壁に掛けて保管するときに使います。
・モンキーレンチの英語表現。
※興味ない人は飛ばして下さい。
英語では、アジャスタブル レンチ(adjustable wrench)と言うのが一般的です。
その他の表現。
・アジャスタブル スパナ(adjustable spanner)
・シフティング スパナ(shifting spanner)
・シフター(shifter)
・クレセント レンチ(Crescent wrench)
Crescentは昔の有名ブランドの名前。
英語のモンキーレンチ(monkey wrench)は、発明当初の古いタイプの可動式レンチを差すことが多いようです。
現在の「モーターレンチ」という工具が、上記イラストの古いモンキーレンチと同じような形状をしています。
「パイプレンチ」という工具も、あごの内側にギザギザがあるだけで、ほとんど同じ形状のものがあります。
モンキーレンチのサイズ。
- 全体の長さ。
- 口(ボルトを挟む部分)の開き幅。
- ヘッド(挟む部分全体)の厚み。
- ヘッドの横幅。(JIS)
- 上あごの長さ。(ISO)
日本のJIS規格、国際規格のISOで様々な長さが規定されています。
使用するうえで重要な部分を表にまとめます。
バイクでよく使われているボルトの頭のサイズは8mmから19mm。
もっと大きいボルト類もありますが、補助的工具のモンキーレンチを大きいボルトにはなるべく使いたくないですね。
- JISの長さ150mm、口の開き20mm。
- ISOの長さ150mm、口の開き19mm。
- もう少し力を入れやすいほうがいいならワンサイズ上。
このあたりが使いやすそうです。
・JIS。
全体の長さ | 口の 最大開き幅 | ヘッドの 厚み | ヘッドの 横幅 |
---|---|---|---|
100(約110) | 13 | 10 | 35 |
150(約160) | 20 | 11 | 48 |
200(約210) | 24 | 14 | 60 |
250(約260) | 29 | 16 | 73 |
300(約310) | 34 | 19 | 86 |
375(約385) | 44 | 25 | 105 |
・ISO。
全体の長さが2種類ずつ。
ヘッドは上あごの長さが規定されています。
全体の長さ | 口の 最大開き幅 | ヘッドの 厚み | 上あごの 長さ |
---|---|---|---|
100・115 | 13 | 10 | 12 |
150・165 | 19 | 13 | 17.5 |
200・215 | 24 | 15 | 22 |
250・265 | 27 | 17 | 26 |
300・330 | 34 | 20 | 31 |
375・405 | 41 | 26 | 40 |
450・495 | 50 | 32 | 48 |
600・645 | 60 | 36 | 57 |
参考:JIS B 4604 : 1998
参考:ISO 6787 : 2018 (E)
使い勝手を考えた様々な機能。
有名メーカー各社が、JISやISOにこだわらずに色々な種類のモンキーレンチを販売しています。
ショート・ショートワイド。
左:ショートタイプ。
右:ショートワイドタイプ。
ショート。
通常よりも、グリップを短くしたタイプ。
モンキーレンチは、強い力をかけるのには向いていないので、
強い力を出さないんだったら、グリップは短くてもいいじゃん。
という発想から生まれたタイプで、有名メーカー各社がラインナップに加えています。
取り回しが良くて作業が楽になるというメリットがあります。
車載工具を入れるスペースがほとんど無いバイクには、有名メーカーのショートタイプがおすすめです。
ただし、短すぎると力をかけにくいので、もの凄く短いものは避けたほうがいいでしょう。
ショートワイド。
通常よりもグリップを短くし、ヘッド(挟む部分全体)を大きくしたタイプ。
挟める最大幅30mm以上という製品が多いです。
大きいサイズのボルトに対応可能ですが、ヘッドが大きくなると、狭い場所では使いにくくなります。
バイクの場合、よく使われているボルトは、8mmから19mm。
大きなボルト類はホイールの中心にあるアクスルナットぐらいです。
バイクにしか使わないのであれば、そこまでワイドな製品は必要ありません。
肉抜き。
軽量化の為、グリップに肉抜き穴を開けたタイプ。
ヘッド(挟む部分全体)が大きいモンキーレンチは、スパナなどに比べて重たいので、軽量化によって作業が楽になります。
現在は、こちらのほうが主流と言えるぐらい普及しているタイプです。
目盛り付き。
下あごの開き幅が分かるように目盛りを付けたタイプ。
使用するボルトやナットのサイズが分かっていれば、手元でだいたいの大きさに合わせておくことが可能。
作業が少し楽になります。
モンキーレンチの角度。
JIS規格、ISOでヘッド(挟む部分全体)の角度は、15度又は22.5度と決められています。
15度は、裏返すと15+15で30度ぶん角度が変わります。
六角ボルトの角は60度。(1周360度 ÷ 6 で60度)
六角ボルトを30度以上回せるスペースがあれば、裏返して回していくことが出来ます。
同じく角度15度のスパナによる説明図。
- 狭い場所で回す。
- 限界まで回して引き抜く。
- 再びセットしようとしてもボルトと工具が合わずにセット出来ない。
- 限界まで回して引き抜く。
- 30度以上回していれば、裏返すことでセット出来る。
- 限界まで回して引き抜く、また裏返してセットを繰り返して回していく。
22.5度は、裏返すと45度ぶん角度が変わります。
頭が四角形のボルトを45度回せるスペースがあれば、裏返して回していくことが出来ます。
次で説明しますが、モンキーレンチは「下あご」方向に回すのが基本です。
裏返して「上あご」方向に回すのは、ネジがゆるいときだけにして下さい。
締め付けの最後に「上あご」方向に回すようになってしまった時は、様子を見ながら慎重に締め付けて下さい。可能であれば、諦めて他の工具を使うことを推奨します。
モンキーレンチの使い方。
- 最初はボルトを指で回す。(締める場合)
- ウォームを回しやすい位置で軽くサイズ調節。
- 水平にして奥まで差し込み、ガタつきがなくなるまでウォームを締める。
- 先端を指で押さえて、下あごのほうへ回す。
1、最初はボルトを指で回す。(締める場合)
ネジが斜めになったまま強い力で回すと、ネジ穴が壊れてしまいます。
特に締め付け始めが斜めになりやすいので注意が必要です。
3~4回転させれば、安定してきます。
最初はなるべく指で回します。
2、ウォームを回しやすい位置で軽くサイズ調節。
最初からボルトの頭にしっかりセットすると、ウォームを回しにくいことが多いです。
ウォームを回しやすい位置、角度でだいたいの大きさに合わせます。
3、水平にして奥まで差し込み、ガタつきがなくなるまでウォームを締める。
斜めになっていたり、途中までしか差し込まれていないと、ボルトの角を痛めるおそれがあります。
ウォームが邪魔で水平に出来ないときは、別の工具を使って下さい。
ガタつきがあると、ボルトの角を痛めたり、下あごにダメージが出たりします。ボルトの頭ピッタリに合わせて下さい。
・ウォームを締め付け過ぎないように。
ウォームを締め付け過ぎると、抜いて再びセットして回していくという行程がやりにくくなります。
締め付けの最後や、固定用として使う場合は、多少締め付けても大丈夫です。
4、先端を指で押さえて、下あごのほうへ回す。
指で押さえることで、外れたり斜めになったりしにくくなりますし、ガタつきにも気付きやすくなります。
可能なら指で押さえながら回して下さい。
下あご(動くほう)に向かって回すと負担が少なくなり、壊れる可能性が減ります。
ボルトを回すときには、ボルトの角の近く 2ヵ所に大きな力が加わります。
モンキーレンチにはボルトと反対側の力が加わっています。
- 下あご方向に回すと、下あごを押し付けるような力が加わります。
押し付けられてもそれ以上は動かないので、簡単には壊れません。
- 上あご方向に回すと、下あごが外れるような力が加わってしまいます。
モンキーレンチ使用時の注意点。
・ガタツキ。
下あごが固定されていない為、使用中は微妙なガタツキが出ます。
「キツく締まったボルトをゆるめる」
「ボルトをしっかりと締め付ける」
といった作業には向いていません。
力の入る作業に使うときは、なるべく先端に指を添えて慎重に行って下さい。
連続で使っていると、下あごがだんだんゆるんでくることがあります。定期的に、ガタつきがないかチェックして下さい。
・長さ。
テコの原理で回す為、全体の長さが長いほど強い力を出すことが出来ます。
通常サイズのモンキーレンチは挟める最大幅に合わせた長さとなっているので、小さいボルトを締め付け過ぎてしまうおそれがあります。
小さいボルトに使うときは、グリップの前のほうを持つなどして慎重に作業して下さい。
モンキーレンチの使用場所。
- ボルトとナット(輪っか形状の部品)がセットの場合に、ナットが動かないように押さえる。
- ツーリング中にゆるんだボルトを締めなおす。
など、補助的、もしくは緊急用として使うのに向いています。
ナットは、押さえておかないとボルトと一緒に回ってしまいます(共回り)。
ボルト側にはガタツキの無い他の工具、押さえておくナット側にモンキーレンチを使います。
もちろん、スパナやめがねレンチなど他の工具でナットを押さえても構いません。
※バイクは、ボルトではなくナットを締め付ける場所もあるので注意して下さい。
モンキーレンチでボルトをゆるめる、締め付ける場合は、様子を見ながら慎重に作業します。
ボルトを痛めたり、モンキーレンチが外れたりしそうな不安を感じたら、無理せずに作業を中止して下さい。
バックミラー。
一般的なバックミラーの固定方法。
- 「アダプター」
アダプターをねじ込む。 - 「ミラー」
ミラーをある程度までねじ込んで、後ろが見えやすい位置で止める。 - 「ロックナット」
ロックナットを締め付けてミラーを固定。
一部のバックミラーは何かにぶつかった時に、ゆるんで衝撃を逃がす作りになっています。
右側のミラーがぶつかってゆるむには、通常とは逆に回るネジ「逆ネジ」が必要です。
ミラーかアダプターのどちらかが逆ネジの場合、ロックナットを締め付けると、アダプターがゆるんでしまうことがあります。
アダプターがゆるむときは、アダプターをモンキーレンチで押さえておいて、ロックナットをスパナで締め付けます。
※締め付けのほう(ロックナット)にモンキーレンチを使わないように注意して下さい。
モンキーレンチはヘッド(ボルトを挟む部分全体)が大きいので、近くのパーツに干渉して使えない場合があります。
干渉しそうなときは、押さえ用にもスパナ(コンビネーションレンチでも可)を用意して下さい。
有名メーカー。
モンキーレンチを販売していて、日本で入手しやすいメーカー。
国別。五十音順、ローマ字順。
日本
・アストロプロダクツ。
・高儀。
・フジ矢。
・ロブテックス。(LOBSTER)
・DEEN。(ファクトリーギア)
・ENGINEER。(エンジニア)
・HOZAN。(ホーザン)
・KTC。(京都機械工具)
・SK11。(藤原産業)
・STRAIGHT。(ストレート)
・TONE。
・TOP。(トップ工業)
アメリカ。
・CRAFTSMAN。(クラフトマン)
・IRWIN TOOLS。(アーウィン)
・Snap-on。(スナップオン)
カナダ。
・SIGNET。(シグネット)
スウェーデン。
・BAHCO。(バーコ)
創業者が今の形状のモンキーレンチを発明。
スペイン。
・IREGA。(イレガ)
モンキーレンチ専門メーカー。
ドイツ。
・HAZET。(ハゼット)
・STAHLWILLE。(スタビレー)
・Were。(ヴェラ)
フランス。
・FACOM。(ファコム)
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所長の次回予告。
次回は、「プライヤー・ラジオペンチ・ニッパー」
工具の基礎 3【コンビネーションレンチ・ギアレンチ(ラチェットレンチ)】
工具の基礎 6【モンキーレンチ】
工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】