バイク用ジャケットには、たいていプロテクターが付いています。
背中・肩・肘・胸部
しかし、「胸部プロテクターだけは別売り」というジャケットが意外と多いです。
胸部はあんまり必要ないの?
事故のときの致命傷部位は、
第一位が「頭部」
第二位が「胸部」です。
致命傷部位。
・頭部:49.7%
・胸部:25.7%
・腹部:9.6%
・その他:15.0%
2018年~2022年の統計。
参考:警視庁ホームページ
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp → 交通安全 → 交通事故防止 → 二輪車の交通事故防止 → 二輪車の交通死亡事故統計。
安全性を重視したい人にとって、胸部プロテクターは必須装備と言っていいでしょう。
大きく 3種類に分けられるので、それぞれ種類別の おすすめを紹介します。
最初は基本情報です。
知ってる情報は飛ばして下さい。
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CEマーク。
安全性の指針となるものに、欧州委員会(EUの行政機関)が定める「CEマーキング」という制度があります。
EU加盟国でプロテクターを販売する場合、プロテクターの検査をしなければなりません。
胸部プロテクターの検査名は「EN1621-3」
検査はレベル1とレベル2の 2種類あって、レベル2のほうが厳しい内容となっています。
検査に通れば「CEマーク」というマークを製品に表示できます。
※UKCA(画像 下)は、EUを離脱したイギリス向けのマーク。内容的にはCEマークと同じです。
商品説明には、
「CEレベル1」
「CEレベル2」
と表記されることが多いです。
胸部プロテクターの検査。EN1621-3
大きさや素材の検査もありますが、安全性に直接かかわってくるのは「衝撃吸収検査」
プロテクターの上に重りを落として50ジュールの力を加えます。
その時どれだけの衝撃が伝わったかを計測します。
数値が低いほど衝撃が伝わりにくかった (衝撃を吸収できた) ということになります。
・EN1621-3:2018。胸部。
レベル1:平均18kN未満。24kNを超えないこと。
レベル2:平均15kN未満。20kNを超えないこと。
もう少し詳しい内容は、こちらをご覧ください。
胸部プロテクターの種類。
素材は主に 3種類。
- ソフト。
- ハード。
- 特殊素材。
順番に説明していきます。
ソフト。
文字通り柔らかい素材。
指で簡単に折り曲げられるものから、ゴムパッキンのようなものまで色々な硬さがあります。
柔軟性がある為、タイトなジャケットを着ても突っ張りにくいというメリットがあります。
昔は「ウレタン」が主流でしたが、ウレタンではCEマークを取得するのが難しいようで、現在は様々な素材が使われています。
ハード。
主に硬い樹脂 (プラスチック) 系の素材で作られたプロテクター。
内側 (胸に触れる部分) に、薄いウレタンなど柔らかい素材を使っている製品もあります。
というか、昔は「硬いプラスチックと薄いウレタン」の組み合わせが定番でした。
現在は色々な素材が使われています。
中空構造・ハニカム構造など隙間を多くとることで、「軽量化」と「断熱性や通気性の確保」をする。という作りが主流です。
特殊素材。
普段は柔らかく、衝撃を受けると硬くなって、衝撃を反発・吸収・分散させる素材。
※普段は柔らかいので、ソフトに分類されることもあります。
バイク用では「D3O」「PORON」「HILON」「SAS-TEC」「KNOX MICRO-LOCK」といった名前の素材が使われています。
柔軟性や衝撃吸収性能は素材によって違います。
特殊素材の元祖的な「D3O」という素材を使ったプロテクターは高性能で低価格。
CEマークを取得している高性能な製品でも、薄くて通気性もよく値段も安め。
D3Oはこの素材を使ったプロテクターの元祖なので、
おそらく形状の研究も沢山 行われていたからだと思われます。
一方、CEマークを取得すると分厚くなってしまう特殊素材もあるので、商品説明をよく確認するようにして下さい。
プロテクターの「形状」による種類は主に 3種類。
- セパレート型 (分割式)。
- 一体型。
- 着用型。
それぞれの特徴を順番に説明していきます。
セパレート型。(分割式)
右の胸、左の胸にひとつずつ付けるタイプ。
装着方法。
- ジャケットの収納用ポケットに入れる。
- ジャケットにマジックテープで取り付ける。
- ジャケットにボタンで取り付ける。
バイク用ジャケットには、最初からポケットやマジックテープ、ボタンが付いていることが多いですね。
ジャケットと同じメーカーのプロテクターを使うのが基本ですが、収納ポケットに入るなら、他のメーカーのプロテクターでも使用できます。
また、マジックテープタイプは、マジックテープをジャケットに縫い付ければ、マジックテープが付いていないジャケットでも使用できます。
ボタン付きのテープも単体で販売されており、縫い付ければ ボタンの付いていないジャケットでも使用できます。
セパレート型のメリット、デメリット。
メリット。
ジャケットの前合わせを開けたときに、取り外す必要がない。
前合わせを開けたときに目立ちにくい。
デメリット。
中央に隙間が開いてしまう。
※中央が重なるようになっていて、中央の強度を確保している製品もあります。
滅多にないとは思いますが、中央に細長いものが当たっても防御できます。
セパレート型のおすすめ。
コミネ:CEレベル2 インナーチェストガードマルチ。
CEレベル2で圧倒的な低価格。
隙間が多く、そこそこの通気性もある。
種類も豊富。
SK-836レディース、ボタン付き。
SK-837レディース、ボタン無し。
SK-838ボタン付き。
SK-839ボタン無し。
低価格で安全性の高いプロテクターが欲しい人に是非おすすめしたい製品。
ボタンでの取り付けは色々なメーカーが採用しています。
同じボタンを採用している他のメーカーのジャケットにも付けれます。
ジャケットに縫い付けるボタン付きのテープ。
一体型。
1枚の「板」のようなタイプ。
装着方法。
- ジャケットにマジックテープで取り付ける。
- ジャケットにボタンで取り付ける。
- ゼッケンのように体に取り付ける。
- レーシングスーツなどタイトなウェアの隙間に入れる。
- ごく一部、ジャケットの収納ポケットに入れるタイプもあります。
ゼッケンタイプは、調節用のベルトが付いていて体にフィットさせることが出来る製品が多いです。
マジックテープとボタンタイプは、マジックテープ、ボタン付きテープを縫い付ければ、色々なジャケットに流用できます。
一体型のメリット、デメリット。
メリット。
中央部分も強度を確保できる。
調節用ベルトの付いたゼッケンタイプはズレにくい。
ゼッケンタイプは、どんな服にでも使用できる。服の上から付けることも出来る。
デメリット。
ボタン・マジックテープ取り付けタイプは、ジャケットの前合わせを開けるときに、取り外す必要がある。
前合わせを開けたときにプロテクターが見える。
※プロテクターが見えると、威圧感を与えてしまうかもしれません。
一体型のおすすめ。
コミネ:SK-848 エニグマ CE2 エアスルーチェストガードマルチ。
CEレベル2の中では低価格。
発売当時 (2022年) は世界最薄。
現在でもトップクラスの薄さ・柔らかさ・通気性の良さ。
性能面だけなら他のメーカーより頭ひとつ抜けていると言っていい高性能。しかも安い。
種類。
SK-848:ボタン取り付けタイプ。
SK-850:ゼッケンのようにベルトで取り付けるタイプ。
着用型。
シャツやベストのように着るタイプ。
ベスト型は背中プロテクターも付いていることが多く、
シャツ型には、たいてい背中・肩・肘プロテクターも付いています。
プロテクターがむき出しのものと、収納ポケットに入っているタイプがあります。
調節ベルトだけで背中や肩のプロテクターと繋がっているタイプもあります。
着用型のメリット、デメリット。
メリット。
どんな服にでも使える。
胸部だけでなく、背中や肩、肘プロテクターが付いていることが多い。
デメリット。
上着を脱ぐと目立ってしまう製品が多い。
夏用のメッシュジャケットのほうがプロテクターが目立たないので、夏にはあまり使えない。
着用型のおすすめ。
RSタイチ: RSJ337 プロテクション メッシュベスト。
プロテクターが目立たないので、ツーリングの休憩時に上着を脱ぎやすい。
バイク用品店で何度も実物を見てますが、着用タイプの中では、断トツでプロテクターが目立たない製品です。
安全性を重視したい人は、上位のプロテクターに交換することが出来ます。
致命傷部位の第一位は頭部、第二位は胸部です。
プロテクター類が苦手な人も、是非このベストぐらいは着てほしい。
所長から一言。(まとめ)
ソフト:柔軟性があって体にフィットしやすい。
ハード:中空構造にしやすく軽い製品が多い。
特殊素材:歴史の長い「D3O」は高性能で低価格。
セパレート型(分割式):ジャケットの前合わせを開けても目立ちにくい。
一体型:中央部分も守れる。
着用型:色々な服に使える。