バイクのメンテナンスでよく使われる工具の基礎と使い方を解説。
第3回は「コンビネーションレンチとギアレンチ(ラチェットレンチ)」
コンビネーションレンチは、
片側がスパナ、片側が めがねのやつだよね。
ギアレンチ(ラチェットレンチ)は、
一度セットすれば外すことなくボルトを回せます。
どっちも便利!
便利だけど、注意点もありますよ。
今回は、コンビネーションレンチとギアレンチの特徴と使い方を解説します。
工具の基礎 3【コンビネーションレンチ・ギアレンチ(ラチェットレンチ)】
工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】
工具の基礎 12【スピンナーハンドル・T型スライドハンドル】
知ってる情報は飛ばして下さい。
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コンビネーションレンチ。
片側がスパナ、もう一方が めがねレンチというお得な工具!
ただし、スパナ部分とめがね部分は同じサイズです。
※スパナとめがねレンチは、1本に2つのサイズが付いています。
国際規格のISOでは「コンビネーションレンチ」
日本のJIS規格では「コンビネーションスパナ」と書かれています。
呼び方は「コンビネーションレンチ」のほうが一般的ですが、日本のメーカーは「コンビネーションスパナ」表記のところも多いです。
スパナとめがねレンチの詳細は、こちらをご覧ください。
コンビネーションレンチのサイズ。
ボルトの頭が収まる部分の幅を「二面幅」と言い、コンビネーションレンチのサイズといえば、二面幅のことを差します。
刻印されている数字が二面幅の大きさで、単位はmm(ミリメートル)。10なら10mm、12なら12mm、14なら14mm。
基本的に、スパナ部分と メガネ部分は同じサイズです。
・インチ工具。
ハーレー、ビューエルなど一部のバイクには、mm(ミリメートル)ではなく、「インチ」のネジが使われていることがあります。
サイズは、1/4、5/16、3/8、7/16といった分数での表記です。
mmに換算する場合は、1インチ25.4mmで計算して下さい。
3/8なら、3 ÷ 8 × 25.4 で9.525mm。
ボルトの頭のサイズが9.5mmちょっとだったら、3/8の工具が必要ということです。
コンビネーションレンチの長さ。
テコの原理で回すので、持ち手が長いほど強い力で回すことが出来ます。
外れやすい「スパナ」は、強い力を入れられないように短め。
外れにくい「めがねレンチ」は長め。
スパナとめがねレンチを合わせ持つコンビネーションレンチは、その中間の長さ、どちらかといえばスパナ寄りの長さとなっています。
・サイズと長さの関係。
サイズが大きくなるにつれて長くなっていき、強い力を出せるようになっています。
基本的にボルトもサイズが大きいほど強く締め付けられている為です。
・車載工具。
めがねレンチやソケットレンチに比べてかさ張らないので、収納スペースが小さいバイクの車載工具に向いています。
コンビネーションレンチの角度。
- JIS規格:スパナ部分は(上から見て)横に約15度。
- JIS規格:めがね部分は上に約15度。
- ISO規格:めがね部分は上に15度 ±5度。
- ISO規格:めがね部分は少し曲がった後、上に15度 ±5度。
めがね部分に角度が付いているおかげで、平らな場所でも握りやすくなっています。
参考:JIS B 4651:1998
参考:ISO 7738:2015(E)
長さや角度はオーソドックスな製品のものです。用途に合わせて様々な長さ、角度の製品があります。
コンビネーションレンチの使い方。
- 最初は指で回す。(締める場合)
- 引いて回せる位置にセット。
- 先端を指で押さえて回す。
1、最初は指で回す。
ボルトが斜めになった状態で強く回すと、ネジ穴が壊れます。
いきなり工具を使うより、指を使ったほうが斜めになったときに気付きやすくなります。
指は工具ほど力が出せないので、もし斜めのまま回してもネジ穴を痛める可能性が減ります。
手を入れるスペースがあるなら、なるべく最初は指で回して下さい。
※特に最初の3~4回転ぐらいまでが斜めになりやすいので要注意。
2、引いて回せる位置にセット。
押すように回すと、外れたときに手をバイクに当ててしまうおそれがあります。
可能であれば、引いて回すようにします。
ボルトの場所、作業時の姿勢で握りやすいほうの手や握り方は変わります。
なるべく安定して力を入れやすい体勢で作業して下さい。
3、先端を指で押さえて回す。
外れにくく出来ますし、工具がズレたときに分かりやすくなります。
出来るだけ指で押さえて下さい。
スパナは外れやすく、接触面が2ヵ所でボルトに負担をかけやすい為、なるべく めがねレンチ部分を使って作業します。
スパナ部分は、スパナでしか回せない場所や、まだボルトが緩いときに素早く回す手段として使います。
コンビネーションレンチを使う際の注意点。
- 浮き気味にならないようにしっかりセットする。
- 斜めにならないように注意。
- 持ち手ではなく、口(ボルトをハメるところ)を水平に保つ。
多くの製品に角度が付いている為、回しているうちに斜めになってしまわないように注意して下さい。
有名メーカー。
コンビネーションレンチを販売していて、日本で入手しやすいメーカーを国別に紹介。
国別、五十音順、アルファベット順。
日本。
・アストロプロダクツ。
・ロブテックス。(エビ、LOBSTER)
・ASAHI。(旭金属工業)
・DEEN。(ファクトリーギア)
・ENGINEER。
・KTC。(京都機械工具)
・SEK。(Pro-Auto、スエカゲツール)
・STRAIGHT。(ツールカンパニーストレート)
・TONE。
・TOP。(トップ工業)
・TRUSCO。(トラスコ中山)
アメリカ。
・CRAFTSMAN。(クラフトマン)
・Snap-on。(スナップオン)
イタリア。
USAG。(ウーザック)
カナダ。
・SIGNET。(シグネット)
スウェーデン。
・BAHCO。(バーコ)
ドイツ。
・QEDORE。(ゲドレー)
・HAZET。(ハゼット)
・STAHLWILLE。(スタビレー)
・Wera。(ヴェラ)
・Wiha。(ビーハ)
フランス。
・FACOM。(ファコム)
コンビネーションレンチのランキングやレビューは、こちらからご覧ください。
amazon 片口スパナ(コンビネーションレンチ)の売れ筋ランキング。 amazon「コンビネーションレンチ」検索結果。 楽天市場「コンビネーションレンチ」検索結果。 Yahoo!ショッピング「コンビネーションレンチ」検索結果。リンクは全て別タブで開きます。
調べたい商品が決まっている方は、検索ボックスにメーカー名などを足して検索して下さい。
続いてギアレンチについて。
ギアレンチ。(ラチェットレンチ)
ラチェット機構(この後 説明します)を採用した「めがねレンチ」と「コンビネーションレンチ」です。
「ギアレンチ」という名前は、最初に開発したリーウェイ社(現Apex Tool Group)の製品名です。
他のメーカーは、
「ラチェットレンチ」「ラチェットメガネレンチ」「ラチェットコンビネーションレンチ」といった呼び方になっています。
フレックス。
ギアレンチには、首振り(フレックス)機能を備えた製品も多いです。
「フレックスラチェットメガネ」「フレックスラチェットレンチ」などと呼ばれます。
ボルトが ゆるい間は、持ち手を立てて早回し、大きな力を入れるときは水平にして回すといった使い分けが可能です。
他のパーツが邪魔で、水平に回せない場所でも役立ちます。
ラチェット。
内部にギア(歯車)が有り、どちらか一方向にだけ動かせる機構です。
歯車のギザギザの間に「ツメ」と呼ばれる部品を入れることで、歯車が回らなくなります。
しかし、バネが縮む方向にだけは回すことが出来ます。
レバーなどで左右のツメを動かして、右回り・左回りを切り替えます。
ギアレンチの場合、めがね部分の内側が空転するように動きます。
例:(自分から見て)右にだけ空転するようにした場合。
- 左に回すとボルトも左に回ります。
- 右に回すと空転するので、
- ボルトは動かすことなく工具だけ右に動かせます。
- 左、右、左、右・・・と工具を振っているだけで、ボルトを回していくことが出来ます。
※ボルトを ゆるめる場合は、回転方向を切り替えて左に動かしたときに空転するようにします。
回転方向の切り替え。
- レバーなどで回転方向を切り替えるタイプ。
- 矢印が書いてあり、回転方向が決まっているタイプ。
裏返すことで反対に回せます。
ボルトがユルユルのときは空回りしない。
空転するといっても、多少の抵抗はあります。
ボルトがある程度 締まっていないと、空回りせずにボルトも動いてしまいます。
ラチェット機構を使うのは、少し締め付けてからになります。
ボルトを ゆるめる場合も、ある程度ゆるんでくると空回りせずにボルトがどちらにも動きます。
そこまで ゆるめば、ギアレンチを外して指で回せます。
もちろんギアレンチや他の工具でゆるめていってもOK。
ギア数。
内部にあるギア(歯車)のギザギザの数のことです。
ギザギザが多いほど、動かす量が少なくてもボルトを回せます。
例えば、
ギア数36なら、1周360度 ÷ 36で10度。
10度以上回せば、ボルトを締めたり ゆるめたり出来ます。
・ギア数72なら、5度以上。
・ギア数90なら、4度以上。
と、ギア数が多いほど狭い場所でも使えますし、あまり大きく動かさなくてもボルトを回すことが出来ます。
しかし、ギア数が多いということは、ギザギザが小さいということです。
強度を保つための工夫などで、少し値段が高くなるという傾向があります。
ギア数の表記方法。
・ギア数72。
・72ギア。
・72山。
・送り角 5度。
どれも同じ意味です。
ギアレンチ(ラチェットレンチ)の大きさ。
上:ソケットレンチ。10mmのソケット装着
中:ギアレンチ(ラチェットレンチ)。8mm・10mm
下:コンビネーションレンチ。10mm
同じようなグレードの製品で比較すると、ソケットレンチがいちばん大きく、次いでギアレンチ、いちばん薄くて小型なのがコンビネーションレンチ。
車載工具にスパナやコンビネーションレンチがよく採用されるのは、このサイズ感を見れば納得ですね。
ギアレンチ(ラチェットレンチ)の使い方。
- 指で限界まで回す。(締める場合)
- 回転方向の確認。力が入るときに引いて回せる位置にセット。
- 先端を指で押さえながら回す。
1、指で限界まで回す。
最初はネジ穴を痛めにくい指で回します。
ボルトがユルユルだとラチェット機構が働かないので、出来るだけ締めておきます。
手が入らず指で回せないときは、他の工具を使うか、ラチェット機構に頼らず、回す→外す→セットし直す→回すで締め付けていきます。
2、回転方向の確認。力が入るときに引いて回せる位置にセット。
事前に回転方向を確認しておきます。ただ、間違っていても空回りするので すぐ気付きます。
力を入れて押すように(体から離れるように)回すと、外れたときに 手をバイクにぶつけてしまいます。
ボルトの位置や体勢によりますが、
なるべく力を入れるときに引く動き、空転のときに押す動きとなるようにすれば外れにくくなります。
ボルトの場所、作業時の姿勢で握りやすいほうの手や握り方は変わります。
なるべく安定して力を入れやすい体勢で作業して下さい。
3、先端を指で押さえながら回す。
外れにくく出来ますし、ギアレンチが斜めになったりしても気付きやすくなります。
手を入れるスペースがあるなら、先端を指で押さえるようにして下さい。
使用時の注意点。
強く力を入れすぎると、ラチェット機構が壊れてしまうおそれがあります。
・本締め可能という製品。
「本締め可能」「規格トルクをクリア」などと書かれていれば、通常の使用には問題なく使えます。
ただし、「なかなか緩まないボルトを体重をかけて回す」といったことは想定されていないので注意して下さい。
固着してなかなか緩まないボルトは、めがねレンチやスピンナーハンドルなど強い力をかけられる工具を使います。
関連記事。
工具の基礎 2【スパナ・めがねレンチ】
別タブで開きます。
工具の基礎 12【スピンナーハンドル・T型スライドハンドル】
別タブで開きます。
有名メーカー。
ギアレンチを販売していて、日本で入手しやすいメーカー。
国別、五十音順、アルファベット順。
日本。
・アストロプロダクツ。
・ロブテックス。(エビ、LOBSTER)
・Anex。(アネックス)
・DEEN。(ファクトリーギア)
・ENGINEER。(エンジニア)
・Ko-ken。(山下工業研究所)
・KTC。(京都機械工具)
・SEK。(Pro-Auto、スエカゲツール)
・STRAIGHT。(ツールカンパニーストレート)
・TONE。
・TOP。(トップ工業)
・TRUSCO。(トラスコ中山)
アメリカ。
・CRAFTSMAN。(クラフトマン)
・Snap-on。(スナップオン)
イタリア。
USAG。(ウーザック)
カナダ。
・SIGNET。(シグネット)
スウェーデン。
・BAHCO。(バーコ)
ドイツ。
・QEDORE。(ゲドレー)
・HAZET。(ハゼット)
・STAHLWILLE。(スタビレー)
・Wera。(ヴェラ)
フランス。
・FACOM。(ファコム)
ギアレンチ(ラチェットレンチ)のランキングやレビューは、こちらからご覧ください。
amazon ラチェットレンチの売れ筋ランキング。 amazon「ラチェットレンチ」検索結果。 楽天市場「ラチェットレンチ」検索結果。 Yahoo!ショッピング「ラチェットレンチ」検索結果。リンクは全て別タブで開きます。
調べたい商品が決まっている方は、検索ボックスにメーカー名や「フレックス」などのワードを足して検索して下さい。
「ギアレンチ」は最初に開発したメーカーの製品名なので「ギアレンチ」で検索すると商品数は減ります。しかし減ったことで探しやすくなることもあります。
・所長の次回予告。
次回は、「ソケットレンチ (ラチェットハンドル)」
工具の基礎 3【コンビネーションレンチ・ギアレンチ(ラチェットレンチ)】
工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】
工具の基礎 12【スピンナーハンドル・T型スライドハンドル】