バイクのメンテナンスでよく使われる工具の基本と使い方を解説。
第13回は、「トルクレンチ」
締め付けトルク (ボルトを締め付ける力) を管理するってプロっぽいよね。
憧れの工具のひとつだよね。
ただ、トルクレンチ選びは、ちょっと難しいです。
評判の良い製品をひとつ買えばOK、とは いきません。
色々な作業を正確に行いたいなら、
・低トルク用のトルクレンチ。
・高トルク用のトルクレンチ。
・サービスマニュアル。
高額商品が最低でも 3つ必要です。
トルクレンチの導入は、どんな作業をしたいのか、よく考えてからにして下さいね。
工具の基礎 3【コンビネーションレンチ・ギアレンチ(ラチェットレンチ)】
工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】
工具の基礎 12【スピンナーハンドル・T型スライドハンドル】
工具の基礎 13【トルクレンチ】
最初は基本情報。
その後に「トルクレンチの使い方」です。
知ってる情報は飛ばして下さい。
目次をクリック・タップで移動することも出来ます。
サービスマニュアル。
サービスマニュアルは、専門的な整備内容が載っている整備士向けの冊子です。
ボルト、ナットの締め付ける量(締め付けトルク)も載っています。
バイクに使われているボルト類は、全てどのくらいで締め付けるかが決まっていて、
締め付け過ぎると、ボルトや部品が壊れます。
締め付けが ゆるいと、振動でどんどん緩んでいきます。
指定された締め付けトルクでボルトを締めることが出来るのがトルクレンチです。
※同じサイズのボルトでも車種によって、場所によって締め付けトルクは変わります。
サービスマニュアルは、「メーカー取り扱い店で注文する」のが基本です。
価格は車種によって違っていて、
だいたい5千円前後から 2万数千円ほど。
※更に補足版が必要な場合も有り。
ヤマハは、公式サイトから注文できます。
参考リンク:Y’S GEAR → オンラインショップ → サービスマニュアル
「オークション」や、バイク用品を取り扱っている「通販サイト」で購入できる車種もあります。
有名車種なら、ネット上に情報が出ていることがあります。
サービスマニュアルの中身は、プロ整備士用の専門的な内容です。
自分に必要かどうか、購入前によく考えて下さい。
トルクレンチを購入したい場合、
- サービスマニュアルで作業する場所に使われているボルトやナットの「締め付けトルク」を確認。
- それから締め付けトルクに合ったトルクレンチを探す。
という流れになります。
サービスマニュアルは、通販サイトで検索すると出てくる車種もあります。
対応車種は、バイクの名前と「型式」で載っている場合が多いです。
※型式は数字とアルファベットの組み合わせによる記号です。
車検証の「型式欄」や取扱説明書、メーカー公式サイトなどで自分のバイクの型式名を確認して下さい。
リンクは全て別タブで開きます。
調べたいバイクを絞り込みたい場合は、検索ボックスにメーカー名やバイクの名前を足して下さい。
バイクの締め付けトルク。
車種によって違いますが、
5N・m前後から 150N・m前後ぐらいです。
※ドゥカティのスポーツ系など、一部のバイクは最高値が200N・mを超えます。
残念ながら全てをカバー出来るトルクレンチは、ほとんどありません。
トルクレンチは「10N・m~50N・m」「40N・m~200N・m」など製品によって使用範囲が決まっています。
そして多くのメーカーが、なるべく「最大値の70パーセントぐらいまででの使用」を推奨しています。
まず、締め付けトルクを確認して、余裕を持たせた使用範囲のトルクレンチを選ぶのが基本となります。
単位について。
日本のトルクレンチは「計量法」によって、国際単位のニュートンメートル 「N・m」という単位を使うように決められています。
サービスマニュアルも、日本向けは「N・m」です。
しかし、古いサービスマニュアルでは、キログラム重「kgf (kgf・m)」という単位が使われていることがあります。
1kgf は、9.80665N・m。
5kgfと書かれていた場合、5 × 9.80665 で、49.03325。
約49N・mとなります。
古い外車などのサービスマニュアルでは、フィート・ポンド「ft・lb (ft・lbf)」という単位が使われていることがあります。
※ポンド・フィート lb・ftと記号が逆の場合も有り。数値は同じ。
1ft・lb は、約1.356N・m。
50ft・lbと書かれていた場合、50 × 1.356 で、約67.8N・mとなります。
更に小さい単位は インチ・ポンド「in・lb」。
1in・lb は、約0.113N・m。
50in・lbは、50 × 0.113 で、約5.65N・mです。
トルクレンチは精密機器。
振動、ホコリ、高温、多湿、結露、錆びなどで故障する可能性があります。
間違った使い方をすると正確に計れませんし、部品を痛めてしまうおそれもあります。
取扱説明書を読んで、正しい使い方、正しい保管方法を心がけて下さい。
一般的な注意点。
- 振動を与えないようにする。
- グリップの真ん中を柄と直角に持つ。
- 勢いをつけずに、ゆっくりと操作。
- 使用後は数値を最小にする (プレセット形のみ)。
- 使用後はウエス(タオル)で拭いてケースに入れる。
- 高温多湿とならない場所に保管。
ソケットを叩いて取り付けたり、使用後にポンっと置いたり、
慣れてる人ほどやってしまいがちなので気を付けて下さい。
トルクレンチの種類。
大きく分けて 3種類。
- シグナル式。
- 直読み式。
- シグナル、直読み両方式。(主にデジタル式)
順番に説明していきます。
3種類ともソケットを取り付けて使用するタイプが主流です。
ソケットレンチの基本情報は、こちらをご覧ください。
バイク用は手動式のソケットレンチタイプがメインですが、低トルク専用でドライバー型の「トルクドライバー」という製品や、高トルク用の電動、油圧、エアーで動かす製品などもあります。
シグナル式。
設定した締め付けトルクに達すると、音や振動などで知らせるタイプです。
・「プレセット形」又は「プリセット形」
車やバイクの整備などで使われるタイプ。
締め付けトルクの数値を自分でセットしてから使用します。
プレセット型と表記するメーカーもあります。
・「単能形」
締め付けトルクの値をひとつだけに固定したタイプです。
同じ作業を繰り返す工場のライン作業や、だいたい数値が決まっている車のホイール用などに使われます。
バイクの整備には ほぼ関係ありません。
・「プレロック形」又は「プリロック形」
締め付けトルクを変更するのに工具が必要なタイプです。
簡単に数値を変えられないことで、同じ作業を繰り返しているときの締め付けミスを防げます。
単能形と同じく、主に工場などの作業用です。
プレセット形。(プリセット形)
- 主目盛り。
大まかな数値を表示。
- 副目盛り。
細かい数値を表示。
- グリップ。
回すと、主目盛り、副目盛りの数値を変更できます。
ラインは中指の位置を示します。
- ロック用つまみ。
作業中に数値が変わらない為のロック。
グリップを回して数値をセット。
ボルトを締め付けていくと、セットした数値で「カチッ」という音とともに軽い衝撃が伝わります。
次で説明する直読み式のように目盛りを見る必要がないので、どんな位置に付いているボルトでも楽な姿勢で作業することが出来ます。
ほとんどの製品が右回し専用、締め付け専用です。
ラチェット式は、切り替えレバーで ゆるめる方向にも回せてしまうので注意して下さい。
※トルク機器専門メーカーの東日によると、作業中のネジを緊急的に緩めるときの為に、緩める方向にも回せるようにしているそうです。
・プレセット形のメリット。
価格が安く初期費用が抑えられること。
そこそこ有名なメーカーの製品が5,000円以下から購入できます。
※耐久性は高くない為、長く使い続ける場合は、「すごくお得」とはなりません。
・デメリット。
他のタイプに比べてセットがちょっとやりにくい、使用後に数値を最小に戻す必要があるなど、作業に時間がかかること。
プレセット型のセット方法。
製品によって形状に違いがありますが、基本操作は同じです。
・ロック解除。
画像の製品の場合、UNLOCKのほうに回します。
※ロックの形状や解除方法は製品によって異なります。説明書で確認して下さい。
・数値のセット。
- 主目盛り。
10、20、30、40・・・といった感じで、一定の間隔で数字が書かれています。
※画像の製品は、28、42、56・・・と、間隔は14ずつ。
- 副目盛り。
1、2、3、4・・・といった小さい桁の数字が記されています。
※画像の製品は、0、1、2、3・・・と1ずつ上がっていき14で0に戻る。
例として「75N・m」に合わせる場合。
まず、主目盛りで75と近い数値に合わせます。
画像の製品だと70。
主目盛りを見ながらグリップを回して、グリップの「上端」を70に合わせます。
次に副目盛りを見ながらグリップを締める方向に回して、中心の線に副目盛りの5を合わせます。
主目盛り70、副目盛り5で、75N・mとなります。
※70から75のように上げて合わせる場合は、締め付け方向に回します。
ゆるめる方向に回して合わせると70から下がっていってしまうので注意して下さい。
※高い数値のセットは固くて回しにくいことが多いです。ぞうきんを絞るように両手で回すと楽になります。
・ロックする。
セットした数値が作業中に変わってしまわないようにロックをかけます。
※画像の製品の場合、LOCKのほうに回します。
・使用後は、最小値に。
商品説明、説明書に書いてある使用範囲の最小値に合わせます。
内部部品にかかる不可を減らす為です。
最小値を超えて回せる製品が多いので注意して下さい。
最小値を超えて回し続けると、内部部品が外れたりするおそれがあります。
有名メーカーは、目盛りが見えやすい製品をラインナップに加えていることが多いです。
プレセット形の内部構造。
上:スプリングが「横に動く部品」を押して固定しています。
下:ボルトを締める方向に力を加えていくと、スプリングの固定力を越えた瞬間、部品が動いて柄の内側に当たります。
当たったときに音と軽い衝撃が出ます。
グリップを締める方向に回していくと、スプリングの固定力は上がっていきます。
ゆるめる方向に回していくと、スプリングの固定力は下がります。
グリップを回す量を (固定力を) 変えることで、締め付けトルクを変更できるという仕組みです。
使用後に数値を最小にするのは、スプリングになるべく負荷をかけず ヘタりを抑えるのが目的です。
※内部構造はメーカーによって微妙に違います。
※スタビレー社は全く別の機構を採用しています。
低い数値で何度か試す。
参考:TONE「使用範囲の30パーセント以下の数値では、音と衝撃を感じにくくなる」
プレセット形には だいたいスプリングが使われています。(ひとつ上で説明)
低い数値の場合、スプリングの押し付ける力が弱い為、音や衝撃も弱くなります。
周りの環境によっては気付かないおそれがあります。
低めの数値でどれぐらいの音、衝撃が出るかを試しておくことをおすすめします。
試すのに使うボルトは、ある程度高めの締め付けトルクのボルトを使って下さい。
音、衝撃に気付かず締め続けても、すぐにはオーバートルクになりません。
音に気付かずに締め続けると内部部品に負担がかかります。
気付かなかったと思われるときや不安なときは、力を入れ続けずにやり直して下さい。
プレセット形の校正。買い換え。
校正は、精度チェックのことです。
有名メーカーや校正を行っている会社で精度のチェック、修理が出来ます。
プレセット形は、スプリングのヘタりなどで、徐々に精度が悪くなっていきます。
定期的に校正に出すか、買い換える必要があります。
校正は、安くて6,000円ぐらいから。
故障や部品の交換があれば更に高くなります。
基本的に低価格の製品は買い換えとなります。
校正の推奨期間をいくつか紹介。
- 国際規格ISO:5,000回の使用、もしくは 1年に 1回。
- 東日 :10万回の使用、もしくは 1年ごと。
- TONE :10万回の使用、もしくは 1年ごと。
- KTC :1年に 1回以上。
5千回や10万回といった数字で分かるとおり、仕事で頻繁に使う場合の推奨期間です。
バイクの整備でたまに使うぐらいであれば、もう少し期間をおくのが一般的です。
有名メーカーの製品は、校正証明書が付属しています。
校正証明書の有効期限をいくつか紹介。
- TOP工業。
使用開始日から 1年。未使用の場合 3年。
- TONE。
使用開始日から 1年。未使用の場合 3年。
バイク整備の場合、3~5年ぐらい使ったら校正・買い換えを検討する。
といった感じでしょうか。
※個人の感想です。精度チェックや買い換えまでの期間は、短いほど安心です。
・参考。
東日:https://www.tohnichi.co.jp/
KTC:https://ktc.jp/
TONE:https://www.tonetool.co.jp/
TOP工業:https://www.toptools.co.jp/
ISO 6789-1:2017
直読み式。
リアルタイムで目盛りを見ながら締め付けていくタイプです。
主に「プレート形」と「ダイヤル形」があります。
プレート形。
持ち手 (柄) の上に目盛りと針が付いたタイプです。
「ビーム形」「ニードル形」とも呼ばれます。
※「形」ではなく「型」と表記される場合もあります。
ボルトを締め付けていくと、柄と目盛りが曲がっていきます。
針だけはそのまま動かないので、目盛りを指す数値が変わっていくという仕組みです。
右回し、左回しどちらにも使えます。
構造が単純な為、価格が安くて耐久性が高いというメリットがあります。
デメリットは、横や斜めからだと正確な数値が分からないこと。
横向きのボルトは体を曲げて、下向きに付いているボルトは寝転んで目盛りを見なくてはなりません
目盛りが大きくて狭い場所で邪魔になる可能性もあります。
・置針付。
目盛りを指す針は、力をゆるめるとゼロを指します。
力をゆるめても、そのままの位置をキープする針を付け足したのが置針付です。
東日などが置針付きを販売しています。
・校正。
耐久性が高いといっても5年、10年と使っていればチェックが必要です。
プレート形は校正を受け付けていない会社もあるので、長年使うつもりなら購入前に確認しておいて下さい。
プレセット形と同じく、低価格の製品は校正に出さずに買い換えとなります。
直読み式は、主に検査目的で使用されます。
ただ、プレート形は安くて壊れにくいので、バイク整備に使っている人もいます。
ダイヤル形。
持ち手 (柄) にダイヤルの目盛りが付いたタイプ。
力をゆるめても、そのままの位置をキープする「置針」が付いたものが主流です。
柄の中に金属の軸が有り、金属の歪み具合をダイヤルで表示します。
軸の耐久性は高いのですが、ダイヤルの構成部品が沢山ある為、プレート型よりも耐久性は低くなります。
右回し、左回しどちらにも使えます。
次で説明するデジタル式は 同じような構造で、デジタル表示や音でお知らせなどが出来ます。
バイク整備にも使える「デジタル式」が普及したので、ダイヤル式は ほぼ使われません。
シグナル、直読み両方式。(主にデジタル式)
リアルタイムに数値が表示され、更に設定トルクに達すると音や光などで知らせるタイプです。
基本的には、デジタル式のトルクレンチがこのタイプとなります。
主に 2種類。
- デジタル式。
ソケットレンチにデジタル表示が付いたタイプ。
- 外付け形。
デジタル表示部分のみで手持ちのソケットレンチに取り付けるタイプ。
デジタル式。
ダイヤル形と同じような構造です。
柄の中に金属の軸が有り、金属の歪み具合をセンサーが読み取ってデジタル表示します。
ダイヤル形のダイヤル構成部品や、プレセット形のスプリングのようなヘタりやすい部品がない為、精度が狂いにくく耐久性も高めです。
右回し、左回し(逆ネジ)どちらにも使えます。
ゆるめ方向に使える製品もありますが、基本的には締め付け用です。
多くの製品がデジタル表示以外に、様々な機能を備えています。
例。
・設定したトルクに近づくと音と光で知らせる。
・設定したトルクを何件か記憶しておける。
・単位換算機能。N・m、kgf、ft・lbfなどに換算できる。
・PCやスマホとBluetooth接続してExcelなどに情報を残せる。
低い数値でも高い数値でも同じように音が出るので(プレセット形に比べて)設定トルクに達した時に分かりやすいというメリットもあります。
※プレセット形で表示がデジタルという製品があるので注意して下さい。
右にしか回せないという製品はプレセット形の可能性が高いです。
ただ、プレセット形の中では数値が見やすい、セットが楽というメリットがあります。
デジタル式の校正。
TONE: 1万回使用、もしくは 1年ごと。
KTC:年に1回以上。
趣味のバイク整備で 1万回も使うことは まあ無いでしょうし、構造的に耐久性は高いはずですから、デジタル表示部品やセンサーの故障がなければ長く使えるでしょう。
バイク整備の場合、5~10年ぐらい使ったら、校正・買い換えを検討する。といった感じでしょうか。
※個人の感想です。精度チェックや買い換えまでの期間は、短いほど安心です。
外付け形。
デジタル表示部分と軸(センサー)だけで構成されたような製品です。
手持ちのソケットレンチ(ラチェットハンドル)や、スピンナーハンドルに取り付けて使います。
ハンドルとソケットの間に取り付ける形です。
メリットは、
・どんな長さのハンドルでも測定できること。
・どこを持っても、どんな持ち方でも測定できること。
・デジタル式よりも値段が安い製品が多いこと。
一方、ハンドルとソケットの間にセットする為、
・安定しにくい。
・数値が見えにくい場合がある。
・狭い場所で邪魔になる。
といったデメリットがあります。
差込角。(ドライブ角)
差込角(ソケットを取り付けるところ)のサイズは、
- 低トルク用:6.35mm、9.5mm
- 高トルク用:12.7mm
が、よく使われます。
差込角は大きいほど頑丈です。
高トルク用のトルクレンチは、12.7mmを選んでおくほうが安心です。
ただし、9.5mmのソケットしか持っていない場合、12.7mmのソケットが新たに必要となります。
トルクレンチの使い方。
大まかな流れ。
- 締め付けトルクの確認。
- 他の工具で軽く締め付け。
- トルクレンチに数値をセット。
- トルクレンチでゆっくり締め付け。
- 数値を最小にする。(プレセット型のみ)
締め付けトルクの確認。
サービスマニュアルで確認します。
ボルトではなく、ナットのほうを締め付けるという場所もあります。
サービスマニュアルの表記をよく確認して下さい。
古いサービスマニュアルは単位が「kgf」なので、「N・m」に変換しておきます。
1kgf・m は、9.80665N・m。
5kgfと書かれていた場合、5 × 9.80665 で、49.03325。約49N・m。
古い外車などは単位が「ft・lb」 の場合があります。
ft・lbからN・mへの変換。
1ft・lb は、約1.356N・m。
50ft・lbと書かれていた場合、50 × 1.356 で、約67.8N・mとなります。
※lb・ftと記号が逆の場合有り。数値は同じ。
使用するボルト、ナットの状態も確認しておきます。
錆びまくっていたり変形していたりするボルトでは、正確な数値を計れません。
新しいものに交換して下さい。
ボルトはサイズ(ギザギザ部分の幅)とピッチ(ギザギザの山と山の幅)、そして強度が同じものが必要です。
調べても分からない場合は、バイク屋に聞いて下さい。
他の工具や指で軽く締め付け。
なるべく負担を減らしてトルクレンチの寿命を伸ばす為に、ある程度まで指や他の工具で締め付けます。
「トルクレンチの寿命よりも時間を短縮したい」という人は、最初からトルクレンチでも構いません。
慣れていないうちは、この段階であまり締め付け過ぎないようにして下さい。
トルクレンチに数値をセット。
デジタル式は、上下ボタンなどで簡単にセット出来ます。
直読み式はセットするのではなく、数値を見ながらの作業です。
プレセット形は、主目盛りで10の位などの大きな数値、副目盛りで 1の位などの小さな数値を合わせます。
詳しい方法は、最初のほうの「プレセット形のセット方法」をご覧ください。
ラチェットの切り替えレバーや切り替えダイヤルが途中で止まっていないかも確認しておきます。
トルクレンチでゆっくり締め付け。
まずは、持ち方から。
グリップの中央を握る。
- グリップにラインなど印が入っている場合は、印の上に「中指」が来るように持ちます。
- プレート形はグリップの中の軸が動くようになっていて、真ん中を持たないと軸が傾いてグリップに当たるという仕組みがよく使われます。
テコの原理で回すので、持つ位置が変わると出せる力が変わってしまい、正確な締め付けが出来ません。
体勢的に苦しい場合も、出来るだけ真ん中に力がかかるように持って下さい。
※外付け形(ソケットレンチに取り付けるタイプ)は、持つ位置がどこでも大丈夫です。
柄に対して、手が直角になるように持つ。
トルク機器専門メーカー「東日」の説明書では、直角状態から上下左右プラスマイナス15度が許容範囲となっています。
かなり意識して持たないと、下の画像のように斜めになってしまいます。
※外付け形はどんな持ち方でも大丈夫。
なるべく直角を保って ゆっくりと力を入れる。
一気に力を入れると、一瞬だけ強い力が出て、締め付けトルクを大きく越えてしまうことがあります。
ゆっくりと力を入れていって下さい。
基本的にレンチ類は引いて使います。位置的に引くのが難しい場合や体重をかけるときは、真っ直ぐにゆっくり押していきます。
なるべくヘッドやソケットを手で押さえない。
他の工具は、ブレないようにヘッドやソケットを押さえて回すのが基本です。
トルクレンチは、手で押さえると回す力も抑えてしまう可能性があります。
下向きのボルトなど押さえないと安定しない場合は、出来るだけ軽く押さえて下さい。
※外付け形は、ヘッド部分なら持っても大丈夫です。
プレセット形は「カチッ」と 1回鳴ったら止めます。
何度も鳴らすと(少しだけですが)オーバートルクになります。
アタッチメントについて。
・必要以上に長いエクステンションバーは使わないようにする。
手で強く押さえられないので、バランスの悪いエクステンションバーはなるべく使わないようにします。
使わなければならない場合も出来るだけ短めのものやディープソケットで対応して下さい。
長いエクステンションバーしかない場合は、斜めにならないように慎重に作業して下さい。
・ユニバーサルジョイントなど斜めになるアダプターを使うと正確に計れません。
※外付け形は、本体の上に付けるならユニバーサルジョイントを取り付け可能です。
使用後。
・プレセット形は、数値を最小にする。
対応範囲が 10Nm~60Nmの場合、使い終わったら10Nmに合わせます。
多くの製品が最小数値よりも低く出来てしまいます。
しかし、低くし過ぎると内部部品が外れたりする可能性があるので、対応範囲の最小数値に合わせて下さい。
・ウエス(タオル)で拭いて汚れを取る。
TONEは、ヘッドに防錆油を薄く塗ることを推奨しています。特に裏側のメッキ処理されていない部分。
めんどくさくなければ、たまに防錆油(ミシンオイルなど)を塗って下さい。
防錆油でベタベタだとホコリを呼ぶので、ベタつかなくなるまでウエスで拭きとります。
・ケースに入れて保管。
ケースに入れてホコリを避け、振動が出ない場所、結露・高温・多湿とならない場所に保管します。
ケースが付いていない製品は、入っていた箱に入れたり、別売りのケースを購入して保管します。
ちょうど入るような箱や袋に入れてもいいですが、結露・高温・多湿に気を付けて下さい。
トルクレンチの選び方。
多機能で耐久性も高い「デジタル式」で決まりでしょ?
デジタル式は値段が高めなんですよ。
だいたいプレセット形の1.5倍~3倍ぐらい。
デジタル式を10年ぐらい使い続けるのと、プレセット形を3~5年で買い換えるのと、値段はそんなに変わらないんですよね。
・とりあえず試してみたい。
・今後も使い続けるかどうかはまだ分からない。
・色々な機能があっても使わないし面倒くさい。
→ プレセット形。
・寝転んで目盛りを見るのも余裕。
・低価格で耐久性の高い製品がいい。
→ プレート形。
・多機能が良い。
・音が聞こえやすいほうがいい。
→ デジタル式。
・多機能がいいけど出来るだけ安く。
→ 外付け(ソケットレンチ取り付け)形。
・整備が好き。
・長く使い続ける予定。
→ 東日・KTC・TONEなど、校正を受け付けている有名メーカーの製品。
・工具マニア。
→ スタビレーなど独自機構の製品。
プレート形や外付け形、長い製品、大型の製品は、狭い場所で使えないおそれがあります。
使用する場所をよく確認して下さい。
有名メーカー。
トルクレンチを販売していて、日本で入手しやすいメーカーを紹介。
国別、五十音順、アルファベット順。
日本。
・アストロプロダクツ。
「工具ショップ」オリジナル商品有り。
・アドレック。
「デジタル式メイン」
・エーモン工業。
「カー用品メーカー」
・大橋産業。(BAL)
「カー用品メーカー」
・スエカゲツール。(SEK、Pro Auto)
「工具メーカー」手動式工具メイン。
・東日。
「トルク機器専門メーカー」日本初のトルクレンチ発売。
・トラスコ中山。
「工場用副資材販売」
・中村製作所。(KANON)
「トルク機器、測長機器メーカー」
・ファクトリーギア。(DEEN)
「工具ショップ」オリジナル商品有り。
・藤原産業。(SK11) (低価格帯E-Value)
「DIYツール専門メーカー」
・KTC。
「総合工具メーカー」
・STRAIGHT。(ツールカンパニーストレート)
「工具ショップ」オリジナル商品有り。
・TONE。
「総合工具メーカー」
・TOP。(トップ工業)
「作業工具メーカー」
アメリカ。
・Snap on。(スナップオン)
世界的有名メーカー。
カナダ。
・SIGNET。(シグネット)
スウェーデン。
・BAHCO。(バーコ)
ドイツ。
・GEDORE。(ゲドレー)
「どこを持っても計れる独自機構」世界有数の工具メーカー。
・HAZET。(ハゼット)
「最小値に戻さなくていい高耐久のスプリングを使用」
・PROXXON。(プロクソン)
・STAHLWILLE。(スタビレー)
「最小値に戻さなくていい独自方式」
・Wiha。(ヴィーハ)
「低トルク用トルクドライバーメイン」
・Wera。(ヴェラ)
フランス。
・FACOM。(ファコム)
トルクレンチのランキング、レビューや商品詳細は、こちらからご覧ください。
amazon トルクレンチの売れ筋ランキング。 amazon「トルクレンチ」検索結果。 楽天市場「トルクレンチ」検索結果。 Yahoo!ショッピング「トルクレンチ」検索結果。リンクは全て別タブで開きます。
調べたい商品が決まっている方は、検索ボックスにメーカー名や「デジタル」などのワードを足して検索して下さい。
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