バイクのメンテナンスでよく使われる工具の基本と使い方を解説。
第10回は、電工ペンチを使って圧着端子 (と圧着スリーブ) を取り付ける方法です。
電工ペンチの基礎知識とギボシ端子の付け方は、前編をご覧ください。
電工ペンチ 前編。別タブで開きます。
工具の基礎 3【コンビネーションレンチ・ギアレンチ(ラチェットレンチ)】
工具の基礎 10【電工ペンチ 中編・圧着端子の付け方】
工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】
工具の基礎 12【スピンナーハンドル・T型スライドハンドル】
最初は基本情報から。
目次をクリック・タップで移動できます。
圧着端子の種類。
大きく分けて 2種類。
- 裸圧着端子。
絶縁カバーなし。
- 絶縁被覆(ぜつえんひふく)付圧着端子。
絶縁カバー付き。
よく使われるメジャーな端子を紹介しながら順番に説明していきます。
裸圧着端子。(圧着端子)
左から、
- 裸圧着端子、Y型。(先開型)
- 裸圧着端子、R型。(丸型)
- 裸圧着スリーブ、P型。(重ね合せ用)
心線が中で重なります。 - 裸圧着スリーブ、B型。(突き合せ用)
心線が重なりません。
裸圧着端子、Y型とR型は、ボルトに繋ぐ為の端子。
裸圧着スリーブ、P型とB型は、配線コード同士を接続するのに使用。
※型は「形」と表記するメーカーもあります。
端子に絶縁カバーが付いていないので、「裸」圧着端子と呼びますが、省略して「圧着端子」「圧着スリーブ」と言うこともあります。
絶縁カバーは圧着(配線コードを取り付け)した後に被せます。
付属品として絶縁カバーが付いていない場合は、専用の「絶縁キャップ」や「絶縁テープ」「熱収縮チューブ」などが必要です。
- 裸圧着端子用の絶縁キャップ。
- 絶縁テープ。
- 熱収縮チューブ。
絶縁被覆(ぜつえんひふく)付圧着端子。
最初から絶縁カバーが付いている端子です。
- 左:絶縁被覆付圧着スリーブ、B型。
P型もあります。
- 右:絶縁被覆付圧着端子、R型。
Y型もあります。
圧着スリーブに付いている絶縁カバーは、透明のものが主流です。
圧着端子に付いている絶縁カバーは、様々な色が存在します。
赤・青・黄だけは、大きさが統一されていて、色を見ただけで使用できる配線コードのサイズがだいたい分かるようになっています。
※一部例外はあります。
色 | 基本 サイズ | 対応可能 サイズ (目安) |
---|---|---|
黄 | 0.3sq 0.5sq | 0.2~0.5sq |
赤 | 1.25sq | 0.25~1.6sq |
青 | 2.0sq | 1.0~2.6sq |
黄 | 3.5sq 5.5sq | 2.7~6.6sq |
赤 | 8sq | これ以上は たいてい電工ペンチの 対応範囲外 |
青 | 14sq | |
黄 | 22sq |
対応可能なサイズは、製品によって異なります。
圧着端子のサイズ。
・R型とY型。
最初に書かれている数字が、使用できる配線コードの基本サイズ。
次の数字が、繋ぐボルトのサイズ。
アルファベットは、形状や厚みなどで、メーカーによって違います。
・P型とB型。
数字は、使用できる配線コードの基本サイズ。
アルファベットはメーカー独自のもの。
・適合範囲。
対応可能な配線コードのサイズはメーカーによって微妙に違うことがあります。
適合範囲は商品説明や仕様、パッケージに書かれています。
※絶縁被覆付も、アルファベットが違うだけで、サイズの見方は基本的に同じです。
電工ペンチに付いている機能。
- ワイヤーカッター。
配線コードの切断。 - ダイス。
端子の圧着 (取り付け)。 - ボルトカッター。
ボルトの切断。 - ワイヤーストリッパー。
配線コードの被覆(ひふく)を取る。 - グリップ。又は、ハンドル。
持ち手。
製品によって付いている機能には違いがあります。
圧着(取り付け)できる端子も違う場合が多いです。
同じメーカーの電工ペンチは、圧着できる端子が違っていても見た目は かなり似ています。
必要な機能が備わっているかどうか必ず確認するようにして下さい。
裸圧着端子の取り付け方。
裸圧着端子用のダイスを使います。
特徴は、片方が尖り気味になっていること。
電工ペンチは、尖っているほうが上に来るように持つのが基本です。
右手で持ったときに、書いてある数字が見えるようになっています。
左手で持ちたい人も、尖っているほうが上に来るように持って下さい。
有名メーカーの電工ペンチは、最小のダイスが1.25、ワイヤーストリッパーの最小が0.75sqという製品が多いです。
0.5sqの配線コードを使いたい場合は、対応しているかどうか商品説明を見て確認して下さい。
絶縁用のカバーを先に通しておく。
絶縁用のカバーは、端子を接続してからでは通せません。
忘れやすいので、いちばん最初に通しておきます。
裸圧着スリーブには、「熱収縮チューブ」がよく使われます。
全体を覆う形にする為、長さは圧着スリーブより長め、直径も圧着スリーブより少し大きめのものが必要です。
直径が大き過ぎると収縮しきれないので、直径は少し大きめにして下さい。
裸圧着端子は、専用の「絶縁キャップ」がよく使われます。
専用品なので、端子のサイズに合わせたものが販売されています。
向きは、一般的に外径の小さい側が奥になります。
配線コードの被覆(ひふく)を取る。
ワイヤーストリッパー機能を使って、被覆を剥きます。
- グリップを開く。
- 配線コードを太さに合った場所にセット。
- グリップを握る。(隙間のある製品は軽く回す)
- 配線コードを引き抜く。
詳しい方法は、前編の「ワイヤーストリッパー機能」をご覧ください。
工具の基礎 9【電工ペンチ 前編・ギボシ端子の付け方】
別タブで開きます。
心線の長さ。(被覆を取る量)
「裸圧着スリーブ B型」の場合。
心線の先は中央の窪みに当たり、心線の根本が 1mmほど出る長さに調整します。
指で必要な長さぶん摘まんで、そのままワイヤーストリッパーにセットすれば、だいたい必要な長さで被覆を剥けます。
「裸圧着端子 R型とY型」
心線の先と根本が 1mmぐらい出るようにする。
「裸圧着スリーブ P型」
心線の先と根本が 1mmぐらい出るようにする。
中で心線が重なります。
心線は ねじらず そのままが基本。
どうしてもバラけてしまうときは、少しだけひねって整えます。
※強く ひねることは推奨されていません。
心線は細くて滑りやすいので、
被覆側をひねって、心線側は先に向かって指を滑らせるように動かすと まとまりやすいです。
めんどくさくなければ手袋をつけて下さい。
錆びにくくなります。
電工ペンチに端子をセット。
裸圧着スリーブ B型で説明。
今回は、0.5sqの配線コードを使っているので、0.5と書かれたダイスにセットします。
画像 左の黄色で囲った部分に、ダイスの尖った部分が当たるようにセット。
グリップを軽く握って固定し、横からもズレていないか確認しておきます。
・裸圧着端子 R型、Y型と、裸圧着スリーブ P型の場合。
黄色で囲った部分に、ダイスの尖った部分が当たるようにセットします。
配線コードをセットしてグリップを握りこむ。
心線の根元が 1mmほど出る位置にセット。
指を電工ペンチに添えると、ブレにくくなります。
心線を動かさないよう注意しながら、グリップを握ります。
グリップの後ろのほうを持つと強い力を出せます。
両手で握りこむ。
ある程度握りこんだら、配線コードから手を放しても簡単には動かなくなるので、両手でしっかりと握りこみます。
配線コードを引っかけて動かしてしまわないように注意して下さい。
グリップを閉じきるぐらいのイメージで、おもいっきり握り込もう。
端子をへこませて、心線に強く押し付けることで固定 (圧着) するという仕組みです。
何度も握りこむと心線に負担がかかります。
なるべく 1回で圧着して下さい。
確認。
確認事項。
・圧着ポイントがズレていないか。
・心線の根本が 1mmぐらい出ているか。
・心線がハミ出していないか。
問題なければ、軽く引っ張って抜けないか確認します。
裸圧着スリーブ B型の場合、反対側も同じように圧着します。
・裸圧着スリーブ P型と、裸圧着端子 R型、Y型の場合。
圧着する場所は 1ヵ所です。
確認事項。
・心線の先と根本が 1mmぐらい出ているか、
・心線がハミ出していないか、
・圧着ポイントがズレていないか。
問題なければ、軽く引っ張って抜けないか確認。
絶縁カバーを被せる。
裸圧着スリーブの場合、絶縁カバーに熱収縮チューブを使うのが定番です。
「ヒートガン」を使って収縮させます。
100度前後で収縮する製品が多いので、ハイパワーのドライヤーも使えなくはないです。
しかし、かなり時間がかかり、綺麗に収縮できないこともあります。
ライターなど火を使っての収縮は、慣れていないと難しいです。
ヒートガンを使うのが無難です。
R型、Y型は、専用の「絶縁キャップ」を使うのがおすすめ。
「心線の先は見えている」というぐらいの位置まで被せます。
絶縁キャップの向きは、一般的に「外径の小さいほうが奥」となります。
絶縁キャップがユルいときは、奥側(配線コード側)に「絶縁テープ」を巻いて固定します。
続いて絶縁カバーが付いている端子の取り付け。
絶縁被覆付圧着端子の取り付け方。
絶縁被覆(ぜつえんひふく)付圧着端子用のダイスを使います。
絶縁被覆を突き破らないように、ゆるやかな形状となっています。
赤・青・黄の絶縁カバーは大きさが統一されている為、赤・青・黄の色が付いている製品が多いです。
ただし、あくまで基本サイズであり、対応している配線コードの太さは電工ペンチによって違います。
最小のダイスが1.25、ワイヤーストリッパーの最小が0.75sqという電工ペンチがかなり多いです。
0.5sqの配線コードを使いたい場合は、商品説明をよく確認して下さい。
配線コードの被覆(ひふく)を取る。
ワイヤーストリッパー機能で、配線コード先端の被覆を剥きます。
- グリップを開く。
- 配線コードを太さに合った場所にセット。
- グリップを握る。(隙間のある製品は軽く回す)
- 配線コードを引き抜く。
詳しい方法は、前編の「ワイヤーストリッパー機能」をご覧ください。
工具の基礎 9【電工ペンチ 前編・ギボシ端子の付け方】
別タブで開きます。
心線は、ねじらす そのままにしておくのが基本。
バラけてしまうときは、軽く少しだけひねって整えます。
強く ねじることは推奨されていません。
被覆側をひねって、心線側の指を先のほうへ動かすとまとまりやすいです。
めんどくさくなければ手袋をつけて下さい。
錆びにくくなります。
心線の長さ。(被覆を取る量)
心線の先端を 1mmぐらい出す。
心線の根本も端子から 1mmぐらい出すのが基本ですが、色付きのカバーだと中が見えません。
画像の「ニチフ」の絶縁被覆付端子は、配線コードが突き当たったところで ちょうどいい感じとなるように(心線の根本が端子から少し出るような作りに)なっています。
内側を見ると、端子の後端もカバーされているので、配線コードの被覆がここに当たると自動的に心線の根本が少し端子から出ます。
このような作りとなっていない端子は、配線コードの被覆が端子に当たったところからちょっと(1mmほど)引いて下さい。
絶縁被覆付圧着スリーブは透明のカバーが多いので見ながら調節できます、
長さは裸圧着スリーブと同じで、
P型は、心線の先と根本が 1mmほど出るように。
B型は、心線の先が中央の窪みに当たり、根本は 1mmほど出るように。
電工ペンチに端子をセット。
絶縁カバーではなく、端子部分を圧着します。
黄色で囲った部分がダイスに当たるようにセット。
グリップを軽く握って固定し、横からもズレていないか確認して下さい。
配線コードをセットし、グリップを握りこむ。
配線コードを端子にセットします。
指を電工ペンチに添えると、ブレにくくなります。
配線コードがズレないか確認しながら、グリップを握ります。
グリップの後ろのほうを持つと強い力が出せます。
・ダイス形状がゆるやかで大きめなので、かなり強い力が必要です。
固くて、なかなか握りこめないんですけど?
配線コードを何かで押さえておき、なるべくズレないように注意しながら両手で握って下さい。
配線コードがズレても、ある程度握りこむまでは修正可能です。
両手で握りこむ。
ある程度握りこめば、配線コードから手を放しても簡単には動かなくなるので、両手でしっかりと握りこみます。
配線コードをどこかに引っ掛けたりしないよう注意して下さい。
絶縁カバーを突き破らないよう、ゆるやかなダイス形状になっています。
ピンポイントで強く圧着できないので、かなりしっかりと握り込む必要があります。
力を入れにくい場合は、グリップの下側を机や床に当てて、体重をかけて圧着します。
ゆっくり体重をかけていくより、一気に体重をかけるほうが強い力が出せます。
壊してしまわないように加減はして下さい。
また、何度も圧着すると心線にダメージが出るおそれがあります。
思いっきり圧着するのは、なるべく 1回にして下さい。
確認。
心線の位置と圧着ポイントの位置が適切か確認。
問題なければ、軽く引っ張って抜けないか確認します。
使うダイスが違うだけで、作業的には裸圧着端子と同じですね。
絶縁被覆付圧着スリーブも、圧着する位置は裸圧着スリーブと同じです。
参考リンク。
エーモン。DIYページ。
ニチフ。日本語ページ。
日本圧着端子製造株式会社。
ヒーロー電機株式会社。
Molex JAPAN。
全て別タブで開きます。
参考文献。
厚生労働省,技能検定制度に関わるポータルサイト,3級技能検定の実技試験課題を用いた人材育成マニュアル PDF版(指導者向け),https://waza.mhlw.go.jp/shidousya/,電気機器組立てPDFファイル,参照2023.10.25
ニチフ.圧着作業の基本.https://www.nichifu.co.jp/j/information/lecture01.html,参照2023.10.24
日本圧着端子製造株式会社,製品情報 技術資料,https://www.jst-mfg.com/product/index.php,圧着加工の注意事項,PDFファイル.参照2023.10.24
ヒーロー電機株式会社,ギボシ端子の圧着方法.https://hem.co.jp/special-frh-07-tejyun,参照2023.10.21
molex,圧着ハンドブック(産業向け),https://experience.molex.com/solutions/application-tooling-documentation/,PDFファイル,参照2023.10.21
有名メーカー。
電工ペンチ、圧着ペンチを販売していて、日本で入手しやすいメーカー。
国別、五十音順、アルファベット順。
日本。
・アストロプロダクツ。
・エーモン。「カー用品メーカー」
・エンジニア。
・ストレート。
・高儀。
・ツノダ。
・デイトナ。「バイク用品メーカー」
・デンサン。(ジェフコム)
・トラスコ中山。
・ニチフ。
・ヒーロー電機。
・ファクトリーギア。(DEEN)
・フジ矢。
・ホーザン。
・マクセルイズミ。(旧 泉精機)
・マーベル。
・ロブテックス。(エビ)
・KTC。
・SK11。(藤原産業)
・TONE。
カナダ。
・SIGNET。(シグネット)
ドイツ。
・KNIPEX。(クニペックス)
・STAHLWILLE。(スタビレー)
電工ペンチのランキングやレビュー、商品詳細は こちらからどうぞ。
製品によって圧着(取り付け)できる端子が違います。ダイスのサイズも違います。
商品説明をよく確認して下さい。
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調べたい商品が決まっている方は、検索ボックスにメーカー名などを足して検索して下さい。
圧着端子は通販だとサイズが分かりにくく、「よく見ると100個入り」などもあって購入しにくいです。
個人的には、ホームセンターなどで買うのがおすすめです。
たいてい配線コードや蛍光灯売場の近くに売っています。
絶縁キャップや熱収縮チューブも近くに置いてあることが多いです。
・圧着端子。
最初に書かれている数字が、使用できる配線コードの基本サイズ。
次の数字が、繋ぐボルトのサイズ。
・圧着スリーブ。
書かれている数字が、使用できる配線コードの基本サイズ。
基本的には、パッケージに使用できる配線コードの適合範囲 (対応範囲) が書かれています。
パッケージをよく確認して下さい。
所長の次回予告。
次回は「電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方」
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工具の基礎 10【電工ペンチ 中編・圧着端子の付け方】
工具の基礎 11【電工ペンチ 後編・スプライス端子の付け方】