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バイクの停止距離(空走距離、制動距離)【車種や乗り手で変わる】

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緊急時にどれぐらいの距離で止まれるのか。

山田
山田

空想距離?

神崎
神崎

「空走」距離です。

鈴川
鈴川

まずは用語の説明から。

目次をクリック・タップで移動できます。
距離を見たい方は、目次の「速度と停止距離(目安)」をご覧ください。

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空走距離と制動距離。

空走距離と制動距離
  1. 空走距離。
    A:危険を発見。
    B:ブレーキをかける。
     
  2. 制動距離。
    C:ブレーキが効き始める。
    D:止まる。

空走距離。

危険を察知した後、体が反応してブレーキを操作。
その後ブレーキが効き始めます。

危険察知からブレーキが効き始める直前までの時間を「反応時間」「空走時間」と言います。
車の場合、0.4~0.8秒と言われています。
※何かに気を取られていたりすれば反応時間はもっと長くなります。

反応時間の間に進む距離が「空走距離」です。

計算方法は、

反応時間(秒) × バイクのスピード(m/秒)

空走距離は速度に比例し、
スピードが2倍になれば、空走距離は2倍。
スピードが3倍になれば、空走距離は3倍となります。

神崎
神崎

バイクの場合、
ブレーキレバーに指をかけていると、僅かに反応時間が短くなる可能性が高いです。

見通しの悪い路地や駐車車両の横を通るときに、ブレーキレバーに指をかけて、ブレーキレバー・ブレーキペダル共に遊びを取っておく。
こういったことを習慣づけておけば、イザというときに ほんの少し早く止まれる可能性があります。

制動距離。

ブレーキが効き始めてから停止するまでの距離が制動距離です。

完璧な距離を出すことは難しいのですが、一般的な計算方法は、

減速前のスピード(km/時)の2乗 ÷ 254 × 摩擦係数

制動距離は速度の2乗に比例し、
スピードが2倍になれば、制動距離は4倍。
スピードが3倍になれば、制動距離は9倍となります。

※ABS搭載車は距離が短くなる可能性が高いです。

摩擦係数。

タイヤと路面の摩擦力と、垂直にかかる圧力との比が摩擦係数です。

山田
山田

???

鈴川
鈴川

ざっくり言うと、滑りやすさです。

数値が低いほど滑りやすくなります。

乾燥した道路0.7~0.9
濡れた道路0.2~0.9
0.2~0.35
凍結0.06~0.2
テスト方法で数値は多少変わります。

一般的に、
乾いた道路は0.7。濡れた道路は0.4、又は0.5で計算されます。

※これはタイヤの状態が良いときの数値です。
タイヤがすり減っていれば、もっと滑りやすくなります。

停止距離。

空走距離 + 制動距離が、「停止距離」です。

ブレーキをかけている間の距離ではなく、危険を察知してから完全に停止するまでの距離です。

停止時間。

停止までの時間も計算できます。

反応時間(秒) + スピード(m/秒) ÷ (9.8 × 摩擦係数)

※9.8は重力加速度。

速度と停止距離(目安)。

検索するとよく出てくる数値。
算出方法は不明。

速度空走距離制動距離停止距離
20km/h6m3m9m
30km/h9m6m15m
40km/h11m11m22m
50km/h14m18m32m
60km/h17m27m44m
70km/h19m39m58m
80km/h22m54m76m
90km/h25m68m93m
100km/h28m84m112m
路面が乾燥していてタイヤがすり減っていない場合。

計算してみた。

反応時間:0.8秒。
摩擦係数(晴れ):0.7。
摩擦係数(雨):0.4。
で計算。
反応時間は0.75秒で計算されることが多いのですが、余裕を持たせて0.8秒で計算しています。

速度空走距離制動距離(晴)制動距離(雨)停止距離(晴)停止距離(雨)
10km/h2.2m0.6m1.0m2.8m3.2m
20km/h4.4m2.2m3.9m6.6m8.3m
30km/h6.7m5.1m8.9m11.8m15.6m
40km/h8.9m9.0m15.7m17.9m24.6m
50km/h11.1m14.0m24.6m25.1m35.7m
60km/h13.3m20.2m35.4m33.5m48.7m
70km/h15.6m27.6m48.2m43.2m63.8m
80km/h17.8m36.0m63.0m53.8m80.8m
90km/h20.0m45.6m79.7m65.6m99.7m
100km/h22.2m56.2m98.4m78.4m120.6m

色々なブレーキテストの結果を見ると、制動距離はもっと短いこともあります。
ただ、実際の場面ではテストのようにいかないこともあるでしょうから、この余裕を持たせた数値を覚えておくことをおすすめします。

バイクで検索しても よく出てくる数値、計算方法ですが、これは普通乗用車の目安となります。

バイクの場合。

車両ごとにブレーキの保安基準(最低限必要な性能)があります。
保安基準を元に計算すると、車もバイクも停止距離はだいたい同じぐらいとなるので、上の表の数値はバイクでも参考になります。

反応時間。

ブレーキペダルの上に足が有り、踏み変える必要がないバイクのリアブレーキは、車より早く踏める可能性があります。
また、ブレーキレバーに指をかけていれば、フロントブレーキも車より少しだけ早くかけれるかもしれません。

ただし、バイクは乗り手の重量やブレーキ性能、なによりブレーキ操作の慣れによる違いが出やすい。
といったことも理解しておくべきでしょう。
順番に説明していきます。

重いほうが止まりにくい。

バイクは車よりも遥かに軽いので、全体の重さに対して「乗り手の体重」の占める割合が大きくなります。

同じバイクで 1人乗りと2人乗りの制動テストをしたところ、
2人乗りのほうが停止までの距離が長かった」という実験結果があります。

ブレーキ性能など条件が同じであれば、重いほうが止まりにくくなります。

山田
山田

タンデム(2人乗り)のときは、普段より止まりにくくなるので注意してね。

雨の日はブレーキディスクローターが濡れる。

ディスクローターが左右に2つあるとエアゲージが使いにくい

ディスクローターはタイヤに固定されて一緒に回っています。
摩擦力の高いパッド(ブレーキパッド)でディスクローターを挟み込むことで減速します。

バイクはディスクローターがむき出しですぐに濡れます。
雨でディスクローターが濡れていると、1周して水分が取れるまで少しだけブレーキが効きにくくなります。

停止距離の数値は、普通乗用車で考えられたものです。
バイクは、路面より滑りやすいマンホールや横断歩道の白線などにも注意しなければなりません。
雨の日は車間距離をとって穏やかな運転を心掛けましょう。

別タブで開きます。

タイヤ、ブレーキ性能による違い。

バイクは車種によって付いているタイヤ、ブレーキが かなり違うことがあります。
ブレーキ性能にも差が出ます。

122kgのバイクより、高性能なタイヤとブレーキを装備した167kgのバイクのほうが短い距離で止まれた。
という実験結果があります。

鈴川
鈴川

過信してはいけませんが、高性能なブレーキシステムのバイクは短い距離で停止できる可能性が高いです。

これは実際に乗ったときの感覚とも一致しますね。

ブレーキ性能は年々進化しています。
古いバイクは現代のバイクよりブレーキが効きにくいことがあります。

神崎
神崎

私は古いベスパに乗っていたことがあるのですが、ブレーキは効きにくかったし、重かったです。

一方では、車種や重さの違う15台中14台がほぼ同じような距離で停止している。という実験結果があります。
ファミリーカー・スポーツカー・ミニバン、全て似たような結果となっています。

乗り手による違い。

車はシートベルトで体が固定されていますが、バイクは急ブレーキをかけると体が前にもっていかれます。
バイク自体も前のめりになりますし、フロントフォーク(前のサスペンション)が一気に縮んで性能を発揮しにくくなります。

バイクの動き、体の動きが大きい為 ※ABSが付いていたとしても、初心者が思いきりブレーキをかけ続けるのは難しいことがあります。

初心者や新車でバイクに慣れていないうちは、穏やかな運転を心がけるべきでしょう。

・ABS。
A=アンチロック。B=ブレーキ。S=システム。

ABSはタイヤがロックする(ピタッと止まる)のを防いでくれる装置です。
走行中にタイヤが止まったら、一瞬だけブレーキを緩めてタイヤを回してくれます。
ブレーキをかけ続けタイヤがまた止まれば、また緩めてくれます。
これをもの凄いスピードで繰り返すことでブレーキを強くかけ続けてもタイヤを止めずに減速できます。

停車をスムーズに行う為に、低速では作動しません。

2018年10月から126cc以上の新型車に搭載が義務化されています。
2021年10月から126cc以上の全ての新車に(長年販売されているモデルなどにも)搭載が義務化されました。

・所長から一言 (まとめ)。

所長
所長

よく見る停止距離の表は、車のもの。

でも最低限の数値として参考になる。

所長
所長

雨の日・古いバイク・2人乗りのときは、より慎重に運転しましょう。

別タブで開きます。

参考文献。

和歌山 利宏. “第7章 ブレーキ”. 図説 バイク工学入門. グランプリ出版, 新装版, 2021, p164-183, ISBN978-4-87687-388-3.
“アンチロック状態などを考慮した制動停止距離”. 安藤和彦, 倉持智明, 寺田 剛, 土木研究センター, https://www.pwrc.or.jp/s-pdf/0910-p052-055.pdf, (参照2023-04-19)
“軽いバイクと重量級バイクはどう違う”. BikeBros マガジンズ, https://www.bikebros.co.jp/ridetech/index.php?e=31, (参照2023-04-18)
“交通参加者としての二輪車”. 長江啓泰, 国際交通安全学会, https://www.iatss.or.jp/common/pdf/publication/iatss-review/09-2-04.pdf, (参照2023-04-19)
“速度による停止距離”. 警察庁, https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/regulation_wg/teigen/siryou2.pdf, (参照2023-04-19)
“タイヤのスリップ”. 平尾榮滋, 自動車技術会, https://www.jsae.or.jp/~dat1/mr/img_pdf/lr20018012.pdf, (参照2023-04-19)
“平 忠彦のタンデムツーリング・レッスン”. 日本二輪車普及安全協会, https://www.jmpsa.or.jp/joy/enjoy/lesson/lesson_04.html, (参照2023-04-18)
“普通乗用車運転者の緊急時の制動動作と制動距離”. 松下 寛, 松永勝也, 日本人間工学会, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje1965/37/5/37_5_219/_pdf, (参照2023-04-19)
“ブレーキ性能試験結果一覧”. 自動車総合安全情報, 国土交通省, https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02assessment/car_h19/list_brake.html, (参照2023-04-18)
“横方向からの飛び出し車両に対するドライバの衝突回避操作に関する実車実験結果”.森田 和元, 廣瀬 敏也, 波多野 忠, 児島 亨, 田中 信壽, 日本機械学会論文集79巻807号,
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic/79/807/79_4311/_pdf, (参照2023-06-19)