ヘルメットの安全基準は国によってバラバラで、数多くの規格(検査方法)があります。
日本で販売されているヘルメットでよく見かける規格は、
PSC・SG・JIS・SNELL・ECE。
主要なレース出場に必須の
FIM・MFJ。
衝撃検査の数と範囲から外せないテスト
SHARP。
PSC・SG・JIS・SNELL・ECE・FIM・MFJ・SHARP。
この8つの規格を紹介していきます。
※2024年時点の情報。
FIM
FIM (国際モーターサイクリズム連盟)
- 世界各国116の連盟によって、50以上の世界選手権、計248のレースを行う国際組織。
- MotoGPなど世界の主要なレースに出場する為には、FIMの公認ヘルメットが必要。
FIMの検査に合格したヘルメットに公認を与える。
- 総合的に考えるとFIMと次に紹介するECEが世界一厳しい検査と言えそう。
FIMの検査内容。
HOMOLOGATION MANUALというPDFファイルです。
- ECEの検査方法を基に検査している。
- 22ヶ所のポイントからランダムに13ヶ所をテスト。
- 平面への衝撃テスト8ヶ所。
速度(ぶつける速度)8.2m/S。アゴ部分6m/S。
衝撃275G以上になると検査に合格できない。
低速域を考慮したテスト。
速度5m/S。衝撃208G以上でアウト。
- 斜めにぶつける衝撃テスト5ヶ所。
速度8m/S。衝撃208G以上でアウト。かなり厳しい数値。
- JIS基準の貫通テスト・あご紐テスト 。
等々。
- 検査を申し込む為の条件。
ECE・SNELL・JIS2種 いずれかの規格を取得しておく必要がある。
※JISには 125cc以下用の1種と、無制限の2種があります。詳しくは後述。
公認の条件ではなく、申し込む為の条件です。
MFJ
MFJ (日本モーターサイクルスポーツ連盟)
- FIM (国際モーターサイクリズム連盟)に加盟している日本の機関。
日本の主要なレースに出場する為には、MFJ公認ヘルメットが必要。
- 公認の条件。
FIM・SNELL・JIS2種 いずれかの規格を取得していること。
公認に関する規則。直接PDFファイルに飛びます。
ロードレース用はJIS2種のみ追加試験が必要。
- 貫通テスト。※JIS2種のみ。
3kgの重りを 3mから落下させる。ヘルメット内の人頭模型に当たらなければOK。
SHARP
SHARP (イギリス運輸省が行っている検査)
規格ではなく「評価サイト」
- 膨大な事故データ(Cost-327等)を元にした検査方法。
様々な方向からの「衝撃吸収検査」が重要だと判明。
- 世界一多くの衝撃テストを実施。
検査は衝撃テストのみ。32回。
- 世界一厳しい数値の衝撃テストを実施。
- 2007年からイギリス国内の市販品をテストし、その結果を公開。
検査内容など。
参考:COST 327
Road Safety – European Commission
https://road-safety.transport.ec.europa.eu › files
- 平面と縁石の形をした場所へ ぶつける衝撃テスト30回。
- 斜めに ぶつける衝撃テスト2回。
- 速度(ぶつける速度)、8.5m/S。世界一の数値。
- 低速域を考慮した6m/Sと7.5m/Sのテスト。
テスト結果を公表。
- 事故データに基づいて、おでこ・頭頂部・左右側頭部・後頭部をテスト。
2007年当時は、横と後ろのテストは珍しかった。
- 事故データから、「衝撃吸収」「側頭部の保護」を特に訴えている。
※あご部分は、英国規格・ECEで充分との見解。
- 結果は公開前に各メーカーに通知される。
メーカー側のテストと一致しない場合は異議申し立てが出来る。
このことから、結果はかなり信頼性が高い。
- 昔のテストで、安全性に こだわっていたアライ製品の結果が・・・
アライ製品の多くが側頭部のテスト結果が悪く(ECE・SNELLで検査していなかった場所)、当時話題になりました。
※「HELMET SEARCH」からテスト結果が見れます。
アライの現行トップモデルは最高評価です。
フランスでも2013年から、SHARPと同じような安全評価プログラムを始めています。名称は「Certimoov」
参考:Certimoov
https://www.certimoov.com/en
ECE
ECE (国連欧州経済委員会)
- 国連に5つある地域委員会のひとつ。
- 現在のヘルメットの規格は、Regulation No.22-06
「ECE 22.06」と表記されることが多い。
- 衝撃テストはSHARPに近いものとなっている。
昔、SHARPで側頭部の低評価があったことが原因と思われます。
- 総合的に考えるとFIMとECEが世界一厳しい検査と言えそう。
検査内容。直接PDFファイルに飛びます。
- 5回の衝撃テスト。
※ジェットヘルメットは、あごのテストなしで4回。
おでこ・あご・頭頂部・左右側頭部・後頭部の衝撃テスト。
- 平面にぶつけるテスト。
速度8.2m/S と 7.5m/S。あご部分6m/S。
衝撃275G以上になると検査に合格できない。
縁石の形をした場所にぶつけるテスト。
速度7.5m/S。あご部分6m/S。
衝撃275G以上でアウト。
斜めにぶつけるテスト。
速度8.5m/S。斜めはSHARPと同じ世界一厳しい数値。
衝撃275G以上でアウト。
- 低速域を考慮したテスト。
平面と縁石の形をした場所にぶつけるテスト。
速度6m/S。
衝撃180G以上でアウト。かなり厳しい数値。
- シールド・あご紐・サンバイザーのテスト。
- インカムを付けた状態でのテスト。
等々。
- FIM (国際モーターサイクリズム連盟) が認めている数少ない規格のひとつ。
ECE・SNELL・JIS2種だけがFIMの検査を受けられる。
中でもECEは高く評価されています。
SNELL
SNELL (スネル記念財団)
- ヘルメットの安全性を研究している非営利団体。
レーサーのスネル(William “Pete” Snell)さんが事故で頭部を打ち亡くなったことがきっかけで誕生。
取得は任意。必須ではない。
- 5年ごとに更新。
M2010、M2015、M2020といった名称で区別されている。
- M2020で、ヨーロッパ向けの規格が追加。
アメリカ向けのM2020D。ヨーロッパ向けのM2020R。
- 貫通テスト。
数値はJISより上ですが、JISは2ヶ所(最大4ヶ所)テストしています。
※事故データからあまり重要ではないと判明しています。
- 衝撃テスト。
回数、当てる位置、ぶつける場所などで FIM・SHARP・ECEに劣っています。
- 半球体にぶつけるテストは、ECEの縁石形へのテストより少し厳しい数値。
- 平面への衝撃テストは、ECEと同じ数値です。
検査内容。「2020 Helmet Standard For Use in Motorcycling」というPDFファイルです。
- M2020D。同じ位置で2回の衝撃テスト。
1回目、速度7.75m/S。
2回目、速度5.02~7.09m/S。(サイズによって数値が異なる)
衝撃243~275G以上になるとアウト。(サイズによって数値が異なる)
- M2020R。衝撃テスト2回。
平面へぶつける。速度8.20m/S。
半球体へぶつける。速度7.75m/S。ECEの縁石テストより厳しい数値。
衝撃275G以上でアウト。
- 貫通テスト。
3kgの重りを約2.8m(7.45m/S)から落とす。
- シールド・あご紐のテスト。
あごの衝撃テストは、重りを落とす形のテスト。
等々。
現在は、FIMが認める数少ない規格のひとつになった。
- モーターサイクリスト誌に、専門家による批判記事が掲載される。
※Dexter Ford氏の記事(米モーターサイクリスト誌)
- SHARPで側頭部の低評価。
- M2010・M2015ではECEのクリアが難しい。
※検査内容の序文。
- M2015では、FIMの新しい基準をクリアできない。とFIMに訴えていた。
- FIMは、スネルよりECEを高く評価している。
といった否定的な見解が色々あったのですが、
「検査範囲を側頭部・後頭部の上のほうまで広げる」
「ECE寄りのM2020Rを追加する」
など改善に勤めているようで、
現在はFIMの検査を受けることが出来る数少ない規格のひとつとなっています。
JIS
JIS (日本産業規格)
- 日本の製品に関する規格などを定めた国家規格。
基本的に取得は任意。必須ではない。
- ヘルメットは、1種・2種という二つの規格があり、検査も異なる。
1種は、排気量125cc以下用。
2種は、排気量無制限。
※推奨しているだけで、1種で1300ccに乗っても違法ではない。
検査内容。
- 1種の衝撃テスト。4ヶ所。
速度(ぶつける速度)5.8m/Sで2ヶ所。速度4.8m/Sで2ヶ所。
衝撃300G以上になると検査に合格できない。
- 2種の衝撃テスト。4回 2ヶ所。
同じ位置で2回。その後 場所を変えて同じ位置で2回。
1回目、速度7.0m/S。
2回目、速度5.0m/S。
衝撃300G以上でアウト。
- 貫通テスト2ヶ所。最大4ヶ所。
3kgの重りを2mから落とす。1種は1mから落とす。
- シールド・あご紐のテスト
等々。
- 衝撃・貫通テストの数値はSNELLより低いが、回数が多い。
- FIM (国際モーターサイクリズム連盟) が認めている数少ない規格のひとつ。
ECE・SNELL・JIS2種だけがFIMの検査を受けられる。
PSC
PSC (消費生活用製品安全法)
- 日本で販売するバイク用ヘルメットに必須の規格。
丸にPSCと書かれたマークが目印。
PSCマークの無いヘルメットをバイク用として使うことは出来ません。
- 検査内容。直接PDFファイルに飛びます。
JISの検査方法を使って、最低限必要と思われる検査をしている。
衝撃吸収に関する数値は、JISと同じ。
SG
SG (Safe Goods) (一般財団法人 製品安全協会)
- 製品の安全性に重点を置いた規格。
取得は任意。必須ではない。
- 上限1億円の賠償制度がある。
- 検査内容。「認証の詳細」というPDFファイルです。
ほぼ全てJISの検査方法を使って、安全性に関わる部分を検査。
安全性はJISと同じと言っていい内容。
所長から、一言 (まとめ)
世界の主要レース出場にFIMの公認が必要。
国内主要レースはMFJの公認が必要。
FIMの検査を受けるには、
ECE・SNELL・JIS2種のいずれかを取得しておく必要がある。
FIMは、ECEを高評価。
過去に批判的な意見のあったSNELLも、衝撃テストの強さに関しては劣るJISも
FIMに認められている数少ない規格のひとつ。
SGはJISと遜色ない内容。
日本でよく見かける規格、
ECE・SNELL・JIS・SGどれも優秀と言っていい。
日本で必須のPSCも衝撃吸収能力はJISと同じ。
PSCもそこそこ優秀。
FIM公認ヘルメット一覧。
FIMの公認を得ることが可能な日本のヘルメット↓
アライ。
オージーケーカブト。
オージーケーカブト。
ショウエイ。