バイクや車のガソリンエンジンは気筒数によって乗り心地が変わります。

「シングル」「Vツイン」「ちょくよん(直4)」
カッコイイから言ってるけど、意味は分かってないんだよなぁ。

バイクで主に採用される
- 単気筒(シングル)
- 2気筒(ツイン)
- 3気筒(トリプル)
- 4気筒
- 6気筒
この5つのエンジンについて、どのような特徴があるのかを解説します。

最初は基本情報が続きます。
気筒数による違いなどをすぐに見たい方は、目次をクリック・タップで移動できます。
3気筒と6気筒は次のページになります。
お手数ですが、下のほうにある「次へ」から次のページに進んでください。
気筒数とは

ガソリンエンジンで、バイクを動かす大元と言える部品が「ピストン」
ピストンを収めているケースが「シリンダー」ピストンが円筒形なので、シリンダーの内側も円筒形です。
シリンダー内部が「円筒」で、「空気」とガソリンを吸い込んで燃焼させたりする為、
- シリンダーが 1つのエンジンを「単気筒」
- シリンダーが2つだと「2気筒」
- 3つは「3気筒」
- 4つは「4気筒」
- 6つは「6気筒」
ちなみに、ピストンは上下に動きますが、コネクティングロッドとクランクシャフトによって、回転運動に変わります。

点火プラグが空気とガソリンの混合気に点火。
爆発的な燃焼が起こりピストンを押し下げます。
コネクティングロッドによってクランクシャフトが回転を続け、ピストンは上下運動を続けます。
クランクシャフトの回転が最終的に後輪に伝わってバイクは前に進みます。
詳しくは、こちらをご覧ください。
ごく一部のバイクに採用されている 2ストロークエンジンについてはこちら↓
排気量

排気量は、シリンダー内でピストンがいちばん上から いちばん下まで動いたときに出来る空間ぶんの体積。
基本、立方センチメートルではなく「cc(シーシー)」で表します。たまに「L(リットル、リッター)」という表記も使われます。
※正確には、ピストンがいちばん上からいちばん下まで移動する際に吸い込まれる気体の体積(下の画像「吸入」工程)
又は、ピストンがいちばん下からいちばん上まで動くときに押し出される気体の体積(下の画像の「排気」工程)

ほとんどのガソリンエンジンのバイクに採用されている 4ストロークエンジンは、
「吸入」で空気とガソリンを吸い込む。
「圧縮」で空気とガソリンの混合気を圧縮。
「燃焼」で混合気に点火。
「排気」で燃えた混合気(排気ガス)を排出。
詳しくは、こちらをご覧ください。
気筒数と排気量の関係

排気量600ccで説明すると、
- 単気筒600ccは、600ccの容量を持つシリンダーがひとつ
- 2気筒600ccは、300ccのシリンダーが2つ
- 3気筒600ccは、200ccのシリンダーが3つ
- 4気筒600ccは、150ccのシリンダーが4つ。
気筒数が増えるごとに、シリンダーは小さくなっていきます。
エンジンの振動(エンジンバランス)

気筒数の話で振動とか関係あるの?

気筒数が増えると、ピストンの動きを互い違いにして大きな振動を打ち消し合うといったことが可能なんです。

ざっくりでもいいので振動について知っておくと、気筒数の特徴がより分かりやすくなりますよ。

※忙しい人は、赤い四角で囲った「エンジンの振動 まとめ」まで飛ばしてください。
エンジンの振動には様々な要因がありますが、気筒数の話をするうえで重要なのは「ピストン」が上下に動くときに発生する「慣性力」による振動です。

特に大きな慣性力がかかるのは、ピストンが一番上(上死点)と、一番下(下死点)のとき。
上に動き続けようとする慣性力、下に動き続けようとする慣性力で大きな振動が発生します。
ピストンの慣性力による振動。その基本的な対策を解説していきます。
バランスウエイト(カウンターウエイト)

クランクシャフトの片側を重くする(イラストの緑色部分)ことで、大きな遠心力を発生させます。
遠心力がピストンの慣性力と同じ大きさになるまで重くして、反対向きに発生させる位置に設置すれば、ピストンの慣性力を打ち消すことが出来ます。
ただし、上下の慣性力と完全に釣り合うまで重くすると、横方向(左右)では大きな遠心力がそのまま残ってしまいます。

※慣性力は加速しているときと、減速しているときに発生します。ピストンは真ん中あたりで加速から減速に切り替わり、そのとき慣性力は一瞬ゼロになります。
バランスウエイトで最も標準的なのは、慣性力の50パーセントの遠心力。
上下100パーセントの慣性力を、上下左右50パーセントにして、まんべんなく振動を軽減させます。

ピストンが一番上(上死点)のとき、上向きの慣性力をバランスウエイトが50パーセント軽減。
ピストンが一番下(下死点)のとき、下向きの慣性力をバランスウエイトが50パーセント軽減。
左右にも50パーセントの遠心力となって、全体的に振動を和らげる設定。
※人間は、横の振動よりも上下の振動を不快に感じやすいという傾向があります。バイクのエンジンの場合、慣性力の50〜80パーセントぐらいに設定されることが多いです。

80パーセントの場合、
上下の慣性力は20パーセントまで軽減。左右には80パーセントの遠心力。
バランスシャフト(バランサーシャフト)(バランサー)

ピストンの慣性力を完全に打ち消したい場合は、クランクシャフトに対して逆回転する「バランスシャフト」を追加します。
バランスウエイトは標準的な遠心力50パーセント、「バランスシャフト」の遠心力も50パーセント。
上下のピストンの慣性力はバランスウエイトとバランスシャフトの合力(複数の力を合成したもの)で打ち消し、左右の遠心力は、バランスウエイトと逆回転するバランスシャフトで打ち消します。
ただ、慣性力と遠心力の位置がズレていることで「偶力」による振動が発生します↓
偶力用のバランスシャフト(バランサー)について

遠心力の合力(複数の力を合成したもの、大きい青矢印)と、慣性力(赤矢印)の位置にズレがあると、揺り動かすような振動が起こります。

偶力による振動は、自転車のペダルを強く漕ぐと、左右に揺れる様子をイメージすると分かりやすいと思います。
ちなみに、ズレが大きいほど偶力による揺れも大きくなります。
※例えば、自動車の左右のペダルの位置が近ければ(ズレが小さければ)揺れは少なくなり、左右のペダルが離れていれば揺れは大きくなる。
排気量やエンジン形式によっては、ズレが大きくなって、偶力振動が問題となる場合があります。
偶力も打ち消したい場合は、バランスシャフトを2つ設置します↓

バランスウエイト50パーセント。バランスシャフト25パーセントを2つ。
上下の慣性力、左右の遠心力を打ち消せます。
慣性力(赤矢印)と、遠心力の合力(100%の青矢印)の位置が合うようにすれば、偶力による振動も出ない形に出来ます↓

※ちなみに、2気筒以上の偶力振動で上記の方法を使うと、部品点数が多くなり過ぎてしまいます。2気筒以上の場合は、各メーカー独自の様々な方法を使って偶力振動の対策を行っています。
※偶力は英語で couple(カップル)偶力用のバランスシャフトは「カップリングバランサー」などと呼ばれたりもします。
※バランスシャフトが1つの場合「1軸バランサー」2つの場合「2軸バランサー」などと呼ばれます。
バイクは、エンジンの振動を「鼓動感」などと呼び、「そのバイクのキャラクター」として 敢えて残す。ということもよく行なわれます。
振動対策をすればするほど重くなりますし、対策の部品を回転させる為にエンジンの力が使われてパワーロスが起こります。
部品点数が増えれば、販売価格も高くなってしまいます。
どのぐらい振動対策をするかは、排気量や車種によって変わります。
※排気量が小さくなれば、振動を発生させるピストンも小さくなって、振動は減ります。

気筒数の話をする前に知っておきたい用語に「一次振動」「二次振動」と呼ばれる2つの振動があります。
ちょっとややこしいに話なるので、忙しい人は青色で囲った部分を見てください。
一次振動

ピストンとコネクティングロッドを繋いでいる部品がピストンピン。
クランクシャフトとコネクティングロッドを繋いでいる部品がクランクピン。
ピストンの力はクランクピンに伝わって、クランクシャフトを回転させます。
・ざっくり説明。分からなくてもOK
まずはクランクシャフト(クランクピン)が一定速度で回転していると単純化して考えます。すると、
- ピストンの重量と動き
- コネクティングロッドの動き
- (ピストンの力が伝わっている)クランクピンの動き
この3つからピストンの慣性力を数式で表すことが出来ます。
この数式は、
- ピストンとクランクピンの動きを表したもの
- ピストンとコネクティングロッドとクランクピンの動きを表したもの
この 2つに分解できます。
- ピストンとクランクピンの動きを表したものが「一次慣性力」
- ピストンとコネクティングロッドとクランクピンの動きを表したものが「二次慣性力」
一次慣性力によって発生する振動が「一次振動」と呼ばれます。
二次慣性力によって発生する振動は二次振動。

???
よく分からないっす。
・一次振動の一般的な解釈。
一次慣性力はピストンの重量と動きがクランクピンを動かしている力、この力で発生する振動が一次振動。
これを説明しやすいように要約して、
「ピストンが上下に動くことで発生する振動」を一次振動と呼ぶことが多いです。

一次振動は、上記のバランスウエイトで振動を軽減、バランスシャフトで打ち消すことが可能です。
※一次慣性力の解釈は、どこまで細かく説明するかで変わる場合があります。
今回は気筒数の話がメインなので、細かい説明は省きますが、ピストンが上下に一往復する間にクランクシャフトは1回転(360度回転)します。
ピストンが上下に動くことで起こる一次振動は、360度周期の周波数として表します。

上向きの振動は、クランクシャフトが0度(360度)のときに最大。
下向きの振動は、クランクシャフトが180度のときに最大。
クランクシャフトが横向きの90度、270度のときは振動がゼロとなります。
一次振動は、グラフで表すと「360度周期になる」とだけ分かっていればOK
二次振動

クランクピン(クランクシャフト)が0度から90度まで回ったとき、ピストンは真ん中ではなく、真ん中よりも少し下まで移動しています。
クランクピン(クランクシャフト)が180度から270度まで回ったときも、ピストンは真ん中よりも少し下までしか移動しません。
今回は気筒数の話なので細かい説明は省きますが、コネクティングロッドの動きによって、ピストンは上側では速く動き、下側では遅く動いています。
バイクでアクセルを開けたり閉じたりすると、体が前に持っていかれたり、後ろに持っていかれたりするように、ピストンも速度変化によって振動が発生します。

クランクシャフトのスピードは変わらないの?
※クランクシャフトはタイヤを回す元となる部品ですから、出来るだけ一定速度で回転してもらえるように設計されています。(実際はクランクシャフトの速度も微妙に変化していますが)計算しやすくする為に、ピストンの速度が変化していると考えて計算します。
・二次振動の一般的な解釈。
一次振動の説明でも触れましたが、ピストンの慣性力を表す数式の中で、コネクティングロッドの動きを考慮した部分が二次慣性力(二次振動)
これを分かりやすく要約して、コネクティングロッドによってピストンに速度変化が起こり、そのピストンの速度変化によって発生する振動を「二次振動」と呼ぶことが多いです。
振動の話がメインではないので詳しい説明は省きますが、二次振動は、180度周期の周波数として表します。

- 青い波線が二次慣性力(二次振動)
- 赤い波線は一次慣性力(一次振動)
二次振動の対策。
360度周期の一次振動よりも2倍細かい波の180度周期なので、クランクシャフトの2倍の速度で回転する「バランスシャフト(少し上説明しています)」で振動を打ち消すことが出来ます。
ただバイクのエンジンの場合、二次振動は一次振動の4分の1ほどの大きさです。
小排気量バイクではほとんど問題にならないこともあります。
ハンドルグリップやステップに振動対策用の錘(おもり)を入れて対策することもあります。
二次振動は、グラフで表すと「180度周期になる」
二次振動は、一次振動の4分の1ぐらい。とだけ分かっていればOK
エンジンの振動 まとめ
気筒数の話をするうえで、以下の事だけ知っていれば かなり分かりやすくなります。
・エンジンの振動 まとめ
「バランスウエイト」
遠心力によって、ピストンの慣性力による振動を減らせる。

ピストンの慣性力の50パーセントにした場合、上下100パーセントの振動を、上下左右50パーセントの振動に軽減できる。
「バランスシャフト」
上記のバランスウエイトと併用することで、ピストンの慣性力による振動を打ち消せる。

クランクシャフトと逆回転するバランスシャフトで、上下の振動も、左右の振動も打ち消せる。
「偶力」による振動。
違う向きに発生している力の「位置のズレ」によって起こる振動。
ズレの幅が大きいほど振動も大きくなる。

バランスシャフトをもうひとつ追加するなどして打ち消せる↓

※2気筒以上の偶力対策は、車種によって様々な方法がある。
エンジンの振動は「そのバイクのキャラクター」として ある程度は残す。ということもよく行なわれる。
・エンジンの振動 まとめ
一次振動(一次慣性力):ピストンの慣性力による振動。360度周期で発生。

二次振動(二次慣性力):ピストンの速度変化による振動。180度周期で発生。一次振動の4分の1ぐらいの振動。

青の波線:二次慣性力(二次振動)
赤の波線:一次慣性力(一次振動)

ここから気筒数による特徴です。
お待たせ。
単気筒(シングル)の特徴

単気筒のエンジンは、シリンダーがひとつでスリム。
単気筒エンジンのメリット
単気筒の利点は、部品数(シリンダーとその周りに付随する部品)が少ないのでエンジンを軽く出来ること。細く出来ること。値段も安く出来ます。
また、ピストンが大きくて重いので、クランクシャフトを回す力も大きくなり、低速時や発進時に力強い加速が出来ます。
単気筒エンジンのデメリット

シリンダー(ピストン)が大きいので、2気筒以上のエンジンよりもピストンの動く距離は長くなります。
距離が長いと、同じ回転数(クランクシャフトの回転速度が同じ)でも、ピストンの動くスピードは速くなります。
大きくて重いピストンを速く動かさなければならず、2気筒以上よりも限界が早くなります。
また、シリンダーが大きいと、燃焼室(ピストンの上の燃焼が起こる空間)も大きくなります。
回転数が上がってピストンの速度が上がってくると、広い燃焼室に燃焼のエネルギーを全て伝えきるのが難しくなっていきます。
ピストンを動かすスピードには物理的な限界がありますし、広い燃焼室でエネルギーを伝えにくくなってくる為、エンジン回転数の限界(いわゆるレッドゾーン)が高いバイクには向いていません。
レッドゾーンが低めとなるので、基本的に 2気筒以上のエンジンよりも最高速度は低めとなります。
ピストンがひとつだけなので、2気筒以上のエンジンよりもピストンは大きくなり、重くなります。単気筒は大きく重いピストンによって振動も大きくなります。
大きくて重いピストン、エネルギーロスが出やすい広い燃焼室などによって、大排気量のバイクに単気筒エンジンは使いにくく、中・小排気量のバイクによく使われます。主に400ccぐらいまでが主流です。
単気筒エンジンは、小排気量のバイクや、最高速度よりも低速域の力強さや扱いやすさが重要なバイク、例えばオフロードバイクなどによく使われます。
2気筒(ツイン)の特徴

単気筒のところで説明した通り、単気筒よりもピストンが小さくなることで、ピストンの動く距離も ピストンの動く速度も小さく出来ます。よって、単気筒よりもエンジン回転数を上げやすく(最高速度を上げやすく)なります。
2気筒は市販バイクの排気量帯と相性が良く、125ccぐらいから1000ccオーバーまで多くのバイクに採用されています。
直列2気筒(並列2気筒)の種類

GIFアニメーション作者:MichaelFrey
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Straight-twin_engine_with_different_crank_shaft_angles.gif
直列(又は並列)とは、シリンダーを横並びに配置したエンジン。
2気筒の場合は主に次の 3種類。
- 180度クランク
- 360度クランク
- 270度クランク
順番に説明していきます。
ちなみに、一般的には「直列」と呼ぶことが多く、
ホンダとスズキは基本「直列」と表記。
ヤマハとカワサキは「並列」と表記することがあります。
直列2気筒(並列2気筒)180度クランク

クランクシャフトの角度をそれぞれ180度ズラして(180度クランク、180度位相クランク)、ピストンの動きを互い違いにすれば、上に向かう慣性力と下に向かう慣性力とで一次振動を打ち消すことが出来ます。
180度クランクの燃焼タイミング
ほとんどのガソリンエンジンに採用されている4ストロークエンジンは、クランクシャフトが2回転(720度)する間に「吸入、圧縮、燃焼、排気」が行なわれます。

単気筒は720度に 1回「燃焼」が行われます。
2気筒はシリンダーが 2つですから、720度に 2回「燃焼」が行われます。
180度クランクでは燃焼のタイミングも片方が180度ズレます。(というか、「〇〇度クランク」の〇〇度は燃焼のタイミングのほうが基準です)

2つのシリンダー内で720度に1回づつ「燃焼」が行なわれるので、
180度ズラすと 180度→540度の間隔を繰り返す形となります。
燃焼工程は「爆発」と呼ばれるぐらい大きな力を産み出すので、間隔が均等に揃っていないとスムーズに回転する乗り心地の良いエンジンとは なりにくいという傾向があります。
ただし、バイクのエンジンの場合、燃焼による「音」や「振動」は、そのバイクのキャラクターとして好意的に捉える風潮もあります。
エンジンの「燃焼」工程は、点火プラグでガソリンに「点火」して、「爆発的」な燃焼を起こす為、
「燃焼間隔」「燃焼タイミング」
「点火間隔」「点火タイミング」
「爆発間隔」「爆発タイミング」
など、色々な呼ばれ方をします。
180度クランクの振動について

一次慣性力による「一次振動」は360度周期なので、180度ズラせば周波数は逆向きに重なりあって打ち消し合います。
※赤の波線が1気筒目、緑の波線が2気筒目。分かりやすいように180度ズラして表しました。
二次振動は180度周期なので、180度ズラしても同じ形となって、打ち消し合うことは出来ません。ですので二次振動は発生します↓

青の波線が1気筒目、緑の波線が2気筒目。
※二次振動まで打ち消したい場合。クランクシャフトの2倍の速度で回転するバランスシャフトを設置します。(上記のバランスシャフト参照)
※二次振動は、一次振動の4分の1ぐらいです。車種や排気量でどのぐらい振動対策をするかは変わります。
上に向かう力と下に向かう力の位置にズレがある為、「偶力」による振動も発生します。

※偶力振動まで打ち消したい場合。
2気筒以上の偶力振動を打ち消す、又は軽減する方法は車種やメーカーによって様々です。
振動の話がメインではないので詳しい話は省きますが、バランスウエイトをクランクシャフトの両端に付けクランクシャフトと逆回転の偶力に変換、そして逆回転のバランスシャフトをひとつ付けて打ち消す。
偶力を打ち消すのではなく軽減出来る位置にバランスシャフトを付ける、バランスシャフトを別角度で2つ付けて軽減するといった方法があります。
180度クランクは、大きな振動である一次振動を部品を追加せずに打ち消せるのが最大のメリットです。
直列2気筒(並列2気筒)360度クランク

クランクシャフトを 2つとも同じ角度(360度クランク、360度位相クランク)にしたもの。
180度クランクのように、ピストン同士で振動を打ち消せませんから、一次振動も二次振動も発生します。
しかし、どちらのピストンも同じ動きをする為、偶力(力の位置のズレ)による振動は出ません。
一次振動は大きな振動の為、振動を軽減するバランスウエイトは ほぼ必須。
大排気量の360度クランクは、振動を打ち消すバランスシャフトによる一次振動対策も必要です。
360度クランクの燃焼タイミング
0度ではなく、360度なのは、片方の「燃焼タイミング」を360度ズラすという意味。
※0度クランクだと「燃焼」が同時に起こり、単気筒と全く同じ720度に1回燃焼という形になります。

360度ズラせば、720度に1回の「燃焼」が、360度づつ均等に起こります。
360度クランクは、ピストンに力を加える「燃焼」工程が決まった間隔で順番に起こる為、スムーズに回転しやすい素直なエンジン特性となります。
360度クランクは、大きな振動である一次振動が発生します。一次振動の対策が必要です。
直列2気筒(並列2気筒)270度クランク

クランクシャフトの角度が270度。
※角度は90度とも言えますが、「燃焼のタイミング」から、90度ではなく270度と呼びます↓
270度クランクの燃焼タイミング

270度→450度を繰り返します。
270度クランクは、燃焼工程の間隔が適度にバラけます(不等間隔爆発と呼ばれる)。
このバラけ方によってコーナーからの立ち上がり加速などでグリップ力(タイヤが路面をしっかりと捉える感覚)を感じやすいという効果が得られます。
※実際のレースで大きな効果が出ており、スポーツ志向のバイクに多く採用されています。
270度クランクの振動について

270度のズレがある為、180度周期の二次振動の周波数は逆向きに重なりあって打ち消すことが出来ます。
※90度のズレと考えても同じですが、分かりやすさ重視で270度のズレで表しました。
360度周期の一次振動は270度ズラしても逆向きにはならず、一次振動は発生します。

上向きの力と下向きの力の位置がズレていることによる偶力振動も残ります。(詳しくは180度クランク参照)
一次振動は大きな振動の為、270度クランクは一次振動の対策がほぼ必須となります。
タイヤのグリップ力を感じやすい「不等間隔爆発」は、スポーツ走行に恩恵があるだけでなく、ライダーの安心感にもつながります。
※偶力の振動対策をどれだけするかは車種や排気量によって変わります。
直列(並列)2気筒は、そのバイクのキャラクターや排気量によって、クランクの角度、そしてどの程度の振動対策をするかが決められます。
V型2気筒(Vツイン)

シリンダーをV字型に配置。
幅を取るピストンが離れた位置になる為、クランクピンを共用にすることが可能。
横に並べる直列(並列)エンジンよりも幅を狭く出来ます。
幅が狭い為、別方向に向かう力の位置のズレも小さく「偶力」による振動をかなり小さく出来ます。

V型2気筒:バンク角90度(90度Vツイン)

シリンダーの角度(バンク角)を90度にすれば、ピストンの慣性力と、クランクシャフト(バランスウエイト)の遠心力を釣り合わせて、バランスウエイトのみで一次振動を打ち消すことが出来ます。
90度Vツインの二次振動について

ちょっと、ややこしいです。
興味ない人は、「二次振動は少し発生する」と覚えてください。
バンク角90度の場合、ピストン同士にも90度のズレが生まれます。
並列2気筒の270度クランクと同じように二次振動を打ち消せそうですが、ピストンの動く向きが違う為、打ち消すことは出来ません。
ざっくり説明↓

青の波線の二次振動は、ピストンが上死点(クランクシャフト0度、360度)と、下死点(180度)のとき、どちらも上向きに発生。
ピストンが真ん中(クランクシャフト90度、270度)のときは下向きに発生。
下のイラストで説明すると、
ピストンが上死点、又は下死点で上向きの慣性力を発生させているとき、
もう片方のピストンは、真ん中で下向きに慣性力を発生させています

ピストンの慣性力を 90度方向に分解して(赤矢印と青矢印)考えると、青矢印は反対向きとなって打ち消すことが出来ますが、赤矢印は同じ方向なので打ち消せません。
ただ、分解した片方だけの振動となる為、並列2気筒の180度クランクや360度クランクよりも振動は減ります。
※二次振動を打ち消したい場合は、クランクシャフトの2倍の速度で回転するバランスシャフトを設置します。(最初のほうで説明したバランスシャフトを参照)
※バイクに使われるV型2気筒エンジンは、シリンダーの角度(バンク角)を90度以外にして、振動を「そのバイク特有のキャラクター」として敢えて残す。という場合もあります。
V型2気筒の特徴

バンク角が90度の場合、ピストンの動きにも90度のズレが生じ、燃焼タイミングは270度ズラすことが出来ます(360 – 90 = 270)。
並列2気筒270度クランクと同じ「不等間隔爆発(少し上で説明しています)」となることで、90度V型2気筒も、タイヤのグリップ力を感じやすいエンジンになります。
V型2気筒のメリット。
・振動の大きい一次振動を打ち消せる。
・二次振動も少なめ。
・遇力による振動も少ない。
・スリム。
・グリップ力を感じやすい「不等間隔爆発」になる。
※不等間隔爆発はひとつ前の「並列2気筒 270度クランク」で説明しています。
V型2気筒のデメリット。
・シリンダー上部が離れた位置にある為、シリンダー上部の部品(バルブを動かす部品など)を個別に設置する必要がある。
・空冷エンジンの場合、後ろのシリンダーに走行風が当たりにくい。
・2つのシリンダーの間に隙間が出来る。(隙間を有効活用しにくい)
V型2気筒は、スリムで低振動、不等間隔爆発というメリットから、多くのメーカーが採用しています。
ドゥカティは90度Vツインを伝統的に採用しており、90度にちなんで「Lツイン」と呼ばれます。

ドゥカティがレースで強かったことから、「不等間隔爆発」のエンジンが流行しました。
ハーレーダビッドソンは、シリンダーの角度を45度にして、「独特の爆発間隔による振動を敢えて残す」というエンジンを伝統的に作っています。

モトグッツィは、前から見てV字になる「縦置き」と呼ばれる形を採用しています。

※前から見てV字:縦置き。
※横から見てV字:横置き。
水平対向2気筒(ボクサーツインエンジン)

シリンダーを地面と水平にして、それぞれ逆向きに設置。
V型2気筒とは違って、クランクピンは共有しません。

片方のピストンが上死点(いちばん上)のとき、もう片方のピストンも上死点。
片方のピストンが下死点(いちばん下)のとき、もう片方のピストンも下死点。
と、ピストン自体の動きは同じです。
同じ動きで逆方向に動く為、一次振動も二次振動も逆向きに発生して打ち消し合うことが出来ます。
ピストン間に少しズレがある為、偶力による振動が少し発生します。

※幅を取るピストンが離れた位置にあって重なることがない為、幅を狭く出来る。
ピストンが下死点(いちばん下)のときにピストン同士が近づくのを、ボクサーが試合前のあいさつでグローブを合わせる(グータッチする)様子に例えて、「ボクサーエンジン」とも呼ばれます。
BMWが伝統的に採用しているエンジン方式です。

水平対向2気筒のメリット。
・振動が少ない。
・重たいエンジンを下のほうに設置でき、安定性が高い。
・空冷(走行風でエンジンを冷やすタイプ)の場合、風が当たりやすい。
水平対向2気筒のデメリット。
・シリンダーが左右に張り出す為、空気抵抗が増える。
・横幅が広くて狭い場所や大きくバンクさせる(傾ける)ときに気を使う。
・V型2気筒と同じく、シリンダー上部が離れた位置にある為、上部の部品(バルブを動かす部品など)を個別に設置する必要がある。
4気筒

単気筒、2気筒よりもピストンが小さい為、ピストンを動かす距離、速度ともにかなり少なく出来ます。
ですので、単気筒や2気筒よりもエンジン回転数を上げやすい(最高速度を上げやすい)という特徴があります。
4気筒はスポーツ走行向きのバイクに採用されることが多いエンジンです。
ピストンが小さくて軽い為、発進時の力強さなどは、単気筒や2気筒に劣ります。
※回転数が上がりやすいので、回転数を高めにして素早く発進することは可能。
エンジン回転数を上げやすいということは、単気筒や2気筒よりも燃費が悪くなりやすいということになります。
250ccぐらいまでなら、シリンダーはそれほど大きくないので、4気筒にするメリットはあまりなく、4気筒は400cc以上が主流です。
4気筒は、エンジン回転数上げやすい。また、回転数の上限を高くしやすく最高速度も上げやすい。スポーツ走行向きのエンジン。
燃費の良さ、低速域の力強さは単気筒や2気筒に劣る。
直列4気筒(並列4気筒)

シリンダーを横並びに 4つ配置したエンジン。
ピストンは小さくても、4つ並べると横幅は広くなります。
ピストンの動きを 2組ずつ反対にすれば(180度ズラせば)、
上に向かう慣性力と下に向かう慣性力とを打ち消し合って、「一次振動」を消すことが出来ます。
「1番目・4番目」と「2番目・3番目」のピストンの動きを逆向きにすれば、「偶力」も発生しません。

上向きの慣性力の合力(複数の力を合成したもの、大きい赤矢印)と、下向きの慣性力の合力(大きい青矢印)の位置にズレがない為、「偶力」は発生しない。
並列(直列)2気筒180度クランクと同じく、180度周期の二次振動は180度ズラしても同じ形となって重なりあってしまいます。よって、二次振動は発生します。

※二次振動を抑えたい場合は、クランクシャフトの2倍の速度で回転するバランスシャフトを取り付けます。
並列(直列)4気筒の燃焼タイミング

「1気筒目と4気筒目」、「2気筒目と3気筒目」に分けると、
並列2気筒360度クランクを180度ズラして 2つ組み合わせた形と考えることが出来ます。

緑色が並列2気筒360度クランクの燃焼タイミングで、片方を180度ズラしたもの。
赤色が並列4気筒の燃焼タイミング。
「180度ごとの一定間隔」となり、スムーズに回転するエンジンとなります。
並列4気筒は日本メーカーが得意としていたエンジンです。昔は数多くの車種に採用されていました。燃費があまりよくない、部品点数が多くなるといったことから、採用車種は徐々に減っていきました。
主にスポーツ走行向きのバイクに採用されるエンジンです。
ヤマハが採用しているクロスプレーンと呼ばれる直列(並列)4気筒エンジンについては、こちらをご覧ください。
V型4気筒

V型 2気筒をふたつ並べた形のエンジン。
V型はスリムなので、直列(並列)4気筒よりも横幅を抑えられます。
V型2気筒と同じく、シリンダーの角度を90度にすれば、ピストンの慣性力と、クランクシャフト(バランスウエイト)の遠心力を釣り合わせて一次振動を打ち消せます。
V型2気筒と同じく、二次振動は発生します。
V型2気筒と同じく、ピストン間がほんの少し離れているので、偶力による振動が少しだけ残ります。
※詳しくは少し上の「V型2気筒(Vツイン)」をご覧ください。
V型4気筒の360度クランク

V型2気筒を同じ角度で 2つ並べた形。
燃焼間隔は360度ズラす。
燃焼タイミングは、(0度→)270度→90度→270度→90度→270・・・

緑色が90度V型2気筒の燃焼タイミングで、片方を360度ズラしたもの↑
赤色がV型4気筒の燃焼間隔です。
クランクシャフトが270度回って燃焼、その次は90度と狭い間隔で燃焼。
並列4気筒のようにスムーズに回転するエンジンとはなりません。
V型4気筒の180度クランク

V型2気筒2つを角度を180度 変えて繋げた形。
燃焼間隔も180度ズレます。
燃焼のタイミングは(0度→)180度→90度→180度→270度・・・かなりバラバラのタイミングとなります。

緑色が90度 V型2気筒の燃焼タイミングで、片方を180度ズラした図↑
赤色がV型4気筒180度クランクの燃焼間隔です。
燃焼間隔は90度という狭い間隔もありますが、全体では適度にバラける為、並列4気筒よりもタイヤのグリップ感を感じるエンジンとなります。
長くなり過ぎたので、3気筒と6気筒は次のページで。お手数ですが、「次へ」又は「2」から次のページへ進んでください。





