「速度感が失われる」「道幅が実際とは違って見える」など、走行中の錯覚について。

高速道路を降りた後、一般道のスピードが、めっちゃ遅く感じるやつとか?

そうそう。
どのような錯覚があるのか、知っているだけでも対処しやすくなりますよ。
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道幅の錯覚と曲方指向

左カーブでは「左車線が広く見える」

右カーブでは「右車線が広く見える」
曲方指向
「曲方指向」とは、無意識にカーブの内側に寄っていってしまうこと。
通るラインをあまり意識せずに走っていると、
左折なら路肩のほうへ、右折ならセンターラインのほうへ寄っていってしまうことがあります。
特に注意が必要なのは「センターラインの無いカーブ」を走行するときです。
道幅の錯覚と、曲方指向が合わさることで正面衝突の危険が出てきます↓
センターラインの無い道路での「右カーブ」のイメージ

- 赤:感覚的な中央線(センターライン)
- 青:実際のセンターライン
右カーブでは、自分が走っている「左車線が狭く見える」ことを知っておかないと、中央からハミ出してしまうおそれがあります。
ちょうど対向車が来れば、正面衝突する危険性があります。

左カーブのときも、「対向車は右カーブ」の為、どちらに曲がる際にも気をつけなくてはなりません。
対処法。
「対向車が見えているカーブ」又は「見通しの悪いカーブ」では、しっかり減速してキープレフト(※)を心掛ける。
※キープレフト:車線の左よりを走ること。左端ではなく、左より。

全ての車両がセンターラインを見ているとは限りません。
たとえセンターラインがあっても、

対向車がハミ出してくるかも
と、想定して走行しましょう。
コリジョンコース現象
見通しの良い交差点で、左側、又は右側から来る車両が「止まって見える」現象。
人間の目の見え方は、
・色や形、文字などがしっかり認識できる「中心視」
・ある程度ハッキリと見える「有効視野(中心視野)」
・ボンヤリとしか見えない「周辺視野」
に分けられます。
中心視、 有効視野(中心視野)、 周辺視野

一点を見つめた場合、
- 文字などもしっかり読める「中心視」は左右約 1度ずつ。
- 左右 約30度ずつの範囲がある程度ハッキリと見える「有効視野」
- 左右 約30度~約100度ずつがボンヤリと見えている「周辺視野」
※両目で同時に見える範囲は、左右 約60度まで。
※片目で見える範囲は、左 約100度、右 約100度まで。
速度が上がると視野は狭まります。
「日本自動車工業会」によると、時速40km/hでは左右 約100度ずつあった視野が、時速100km/hでは、左右 約20度ずつになります。
参考:jama 日本自動車工業会 https://www.jama.or.jp/
コリジョンコース現象の仕組み

真っ直ぐ前を見ていると、左側、又は右側から交差点に迫ってくる車両は「周辺視野」でボンヤリと見えている状態です。
左、又は右から来る車両が、
「自分と同じスピード」「同じ角度(45度)」だった場合、ずっと同じ位置(角度)に見えていて、「止まっている」と錯覚してしまうことがあります。
対処法。
交差点が近づいてきたら、目線を動かして左右を見る。
※目だけではなく、顔も動かして左右を見るのが、より効果的です。
減速せずに交差点付近まで進んでくる車両が見えたら、相手から自分は止まって見えているかもしれないと考え、こちらが減速する。
※減速して相手との速度が変われば、止まっていると錯覚されにくくなる可能性もあります。
学術論文では、有効視野は「4度〜20度」という数値が使われることが多く、車関係のサイトでは、有効視野「30度」「35度」という数値がよく使われています。
いずれにせよ、45度付近に見えている車両の速度を把握するには、目線を動かし左右を見る必要があります。
参考:
有効視野の特性とその測定方法, 光科学及び光技術調査委員会, https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/42-09-kougakukoubou.pdf
運転時の視覚的注意と安全性, 三浦利章, https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej/61/12/61_12_1689/_pdf
視覚環境が運転者の速度感に及ぼす影響要因解析,濁澤 雅, 上岡 高之, 片倉 正彦, 大口 敬, 鹿田 茂則, http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00039/200311_no28/pdf/209.pdf

ちなみに、
ウサギの視野は、ほぼ360度。
交差点では左右の道路が狭く見える

(それほど道幅に差がない)交差点では、自分が走っている車線のほうが広く見えます。
信号や標識、停止線などが無い交差点(十字路)では、「広い側」に優先権があります。
自分も、左右から来る車両も、どちらも自身の走っている道が広く見えている為、衝突の危険があります。
対処法。
- 交差点が近づいてきたら、左右を確認する。
- 左右から来る車両の動きをしっかりと見ておく。
- 前もってブレーキレバーに指をかけ、車両が飛び出してくることに備えておく。
※道幅以外にも優先順位を決める要素があります。詳しくは、こちらをご覧ください。

交差点の優先順位を誰もが知っているとは限りません。

自分が優先だとしても、注意して走行しましょう。
参考:e-GOV法令検索 →「道路交通法」で検索→第36条
追従静止視界(ついじゅうせいししかい)

夜間やトンネル走行時など、周りの風景があまり変わらないときに
「自分が止まっているように感じる」現象。
前の車両ばかりを見つめて、(前の車両と)同じ速度で走っているときに起こる現象です。
この現象が起こると、前走車がブレーキをかけたときに、反応が遅れてしまうおそれがあります。
また、前走車がスピードを出し過ぎていても気付かずに、スピード違反となってしまうおそれもあります。
流体刺激
走行時、「周りの景色が後ろに流れていく様子」で速度感を得ることを「流体刺激」と言います。
夜間やトンネル走行時など、周囲の景色に変化が少ないと、速度を感じにくくなります。
正面ばかりを見ていて、周囲の景色がボンヤリと見えている状態では、より速度感を得られにくくなります。
前の車両と同じ速度だった場合、止まっているように感じてしまいます。
対処法
- 定期的にスピードメーターを見る。
- 1ヶ所を見つめ続けない。
速度順応
高速道路を走行していると、だんだんスピードに慣れていき、速度感覚が鈍る現象です。
車間距離を詰めてしまったり、一般道に出た直後にスピードを出し過ぎてしまったりというリスクがあります。
料金所に向かう道(インターチェンジ)など、「長いカーブが続く道」でも、スピードを出し過ぎてしまうおそれがあります。

高速道路から一般道に出た直後、「もの凄く遅く感じる」というのは、多くの人が体験しているのではないでしょうか。
対処法
- スピードメーターを定期的に確認する。
- 速度を落としたときは、自分の速度感覚に頼らず、スピードメーターを確認する。
参考:高速道路利用後の運転者に着目した
速度特性の分析, 坂本 淳, 北河俊樹, 山岡俊一, 藤田素弘, http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00039/201111_no44/pdf/166.pdf
縦断勾配錯視(じゅうだんこうばいさくし)

坂道の角度が実際とは違って見える錯覚。
上り坂が下りに見えたり、下り坂が上りに見えてしまうことさえあります。
周りの景色などによって錯覚が起こる場合もあれば、「坂道の角度が途中で変わる」ことで錯覚が起こることもあります。
坂道の角度が変わることによる錯覚

・上り坂。
途中から緩やかな上りになると、「下り坂に変わった」と錯覚することがある。
・下り坂。
途中から緩やかな下りになると、「上り坂に変わった」と錯覚することがある。
「まだ上り坂なのにブレーキをかけてしまう」
「まだ下り坂なのにアクセルを開けてしまう」といったことが起こる可能性があります。
対処法
誰にでも起こる錯覚の為、周りの交通の流れに合わせつつ、気付いた人が急に速度を変える可能性があることを考えて慎重に運転する。
坂道の頂上で曲がっている道路での錯覚

人間の直感的に、頂上から先の道も そのまま真っ直ぐ伸びているように感じます。
頂上付近から左に曲がっていた場合、対向車が逆走しているかのように見えてしまうことがあります。
とっさに避けようとして反対車線に行くと、正面衝突のおそれがあります。
対処法
- 対向車が逆走しているかのような錯覚が起こる可能性があることを覚えておく。
- 危険を感じて避ける場合も、反対車線に避けるのではなく、減速するか、左端に避ける。
参考:道路の錯視とその軽減対策, JST, CREST 数学領域「計算錯覚学の構築」チーム, 植田 一博 (東京大学). 小野 隼 (明治大学).
北岡 明佳 (立命館大学). 小林 奈央樹(日本大学). 杉原 厚吉 (明治大学). 竹澤 智美 (立命館大学). 對梨 成一 (立命館大学). 友枝 明保 (明治大学). 谷田川 達也(東京大学). 山口 泰 (東京大学), http://compillusion.mims.meiji.ac.jp/pdf/roadillusions.pdf
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